NIMS NOW


特集 持続可能な社会形成に貢献する
NIMS発ベンチャー

株式会社材料設計技術研究所
− シミュレーションソフトの普及をめざして −
材料研究所
計算材料科学研究センター
粒子・統計熱力学グループ
(株式会社材料設計技術研究所 取締役兼業)
小野寺 秀博
小山 敏幸

 磁性材料、軽量高強度材料などの先進材料の機能を最大限に引き出すには内部組織の制御が不可欠であり、新材料の効率的な開発を行うために、コンピュータ上で組織と特性を予測できる材料開発・設計システムが必要とされています。組織制御のための基本情報である状態図については、CALPHAD(CALculation of PHAse Diagrams)法の発展とデータベースの拡充により、実用的な多元系の合金の状態図を精度良く再現できるようになってきています。さらに、動的な挙動を記述できるPhase-field法の進展により組織形成過程の定量的な推定が可能となりつつあります(図参照:磁場中熱処理[図の上段]によって外部磁場方向に伸びたFe濃化相(赤)が部分的に形成し、その後の多段時効[図の中段と下段]によって、Cr濃化相(緑)にはさまれたFe濃化相(赤)がラメラ状に発達している)。
 そこで、長期にわたって状態図の計算と実験及び熱力学データベースの開発に携わってきた東北大、九州工大、産総研の研究者、Phase-field法による組織形成シミュレーション手法の開発を進めているNIMS、ソフトウェアの開発と販売を行ってきたインターサイエンス社の各研究者が結集し、状態図計算用のデータベース及び組織設計シミュレーションシステムの開発と販売を総合的に行うためのベンチャー企業、「株式会社 材料設計技術研究所」を2003年9月12日に発足させました。同年、NIMS及び産総研認定ベンチャー企業となりました。
 幸い、Pbフリーはんだ合金や配線用Cu合金のデータベースが企業の開発ターゲットと合致し、導入する企業が増加しています。また、組織予測シミュレーションについては、現在まだユーザーインターフェイスが完成していないため、ソフトウェアの提供には至っていませんが、個別の材料系、現象についてコンサルタントの形で受注しており、この分野の需要が極めて大きいことを実感しています。今後、ソフトウェアとして提供することにより、大学等での教育用としての普及も見込まれるため、大きな普及の拡大が期待されます。
http://www.materials-design.co.jp

図  Phase-field法により、Fe-Cr-Co磁性合金の磁場中熱処理による組織制御過程を定量的に予測.


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