NIMS NOW


特集 持続可能な社会形成に貢献する
NIMS発ベンチャー

株式会社SWING
− 実用化開発と基礎・基盤研究へのフィードバック −
物質研究所
光学単結晶グループ
(株式会社SWING 取締役兼業)
北村 健二
竹川 俊二

 NIMSにおいて波長変換デバイスに関する研究成果を発表している間にも、企業や大学からプロトタイプデバイスの有償配布を希望する問い合わせが寄せられていましたが、国立研究所と共同研究を希望する場合と、事業へ向けたビジネスの連携は自ずと異なるため、今までは対応が出来ませんでした。
 このような背景から、NIMSで開発した材料および素子の実用化を目的として、2003年5月に、プロトタイプ波長変換素子、ホログラム用単結晶などを有償配布する有限会社SWINGを設立しました。SWINGは、NIMSの光学単結晶グループメンバーが個人出資したベンチャー企業で、研究成果活用に対する支援措置を受けて、NIMSの第一号認定ベンチャーとしてスタートしました。その後、SWINGは、個人出資による増資を伴いながら、有限会社から株式会社へ2005年7月に組織変更を行っています(2005年末資本金2000万円)。幸い、経済産業省の2004年度補助事業、2005年度地域新生コンソシアム研究開発事業にプロジェクトが採択されました。現在、企業とのマッチングを探索しつつ、インキュベーションから独立へ、テークオフの時期を迎えようとしています。
 このような推移のなかで、先端研究の成果を事業化するには極めて大きなギャップがあり、その谷を埋めることができるものは、やはり基礎・基盤研究であることを実感しております。
 デバイスの実用化開発では、従来材料と欠陥制御材料において大きな熱伝導度差を発見しました。これは、ユーザーの要望に応えて測定したものですが、測定してみると2倍以上の差があらわれることを見出しました。これを機に、熱伝導度の違いによる波長変換効率について非常に興味ある理論計算に発展し、計算に沿った実測データも得られております。
 またデバイスプロセスの主要技術である分極反転に関しても、より高い信頼性、再現性を得るためには、強誘電体の分極反転メカニズムを基礎から取り組む必要が切実となっています。
 これらの課題は、実用化プログラムの中で行われていれば応用研究のようでありますが、それぞれは科学技術としてきわめて基礎的あるいは基盤的研究といえますし、学術的にも大変貢献できる課題であります。むしろ、先端研究と実用化開発の間に厳しいギャップがあればこそ、基礎・基盤研究へフィードバックするテーマが豊富に存在することも見逃せません。
 株式会社SWINGが実用化しようとしている研究成果は、永年に渡り国内外の多くの研究者と共同研究や協力を通して得られて来ました。物質・材料研究機構光学単結晶グループの栗村直博士、中村優博士、さらに株式会社オキサイド代表取締役古川保典社長にはあらためて謝意を表します。
http://www.opt-swing.com/

製品例: 株式会社SWING製 周期分極反転を施した定比LT基板
(488 nm SHG用、2インチ径基板).


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