NIMS NOW


特集 持続可能な社会形成を支援する
材料基盤情報ステーション

材料基盤情報ステーションの活動
− 使われる材料データの取得と
     材料情報の発信を目指して −
材料基盤情報ステーション
八木 晃一

 材料は製品や構造物の基です。安全で信頼性の高い製品や構造物を作るためには材料の特性を良く理解することが必要です。しかし、材料の振る舞いを定性的に理解しただけでは材料を製品に活かすことはできません。製品が期待どおりの性能を発揮するためには材料が持っている性能値を製品の設計に活かさなければなりません。そのためには、この性能値を製品の設計者や製造者に伝えることが必要です。
 例えば、自動車の軽量化のためには高強度材料が必要です。自動車に使われる構造部品は振動などにより繰返し荷重を受けます。このため、部品の設計には材料が受け持てる疲労強度値が必要です。また、火力発電所のボイラには高温・高圧の蒸気に耐えることができる耐熱鋼管が使われますが、この設計のためには耐熱鋼が10万時間でクリープ破断する強度値が必要です。
 このように製品や構造物の設計や製造では、材料の能力を機械設計者に提示できる定量的な数値が必要です。NIMSでは、1966年から国産実用金属材料についてクリープおよび疲労試験を実施し、それらの試験データをクリープおよび疲労データシートをして公表してきました。図は約18万時間(約21年)でクリープ破断した試験片(a)とその金属組織(b)です。2002年度から大気腐食、宇宙関連材料強度データ取得も開始しました。
 データを有効に活用するためには、データが生み出される基になる材料の振る舞いのメカニズムを理解していることが重要です。このため、データ取得活動とともに、材料強度特性評価、寿命予測、強度特性発現メカニズムの解明などの研究を実施し、データ取得とともに知識の充実と蓄積を図っています。
 材料特性に関するデータや知識を世界の多くのユーザーに使用していただけるように、2003年4月からNIMS物質・材料データベースをインターネットを通じて公開しています。構造材料データベースもそのひとつです。そして、このデータベース活動では世界の有力なデータベースとのリンクを積極的に進めており、ユーザーにとってより有効なデータと知識を提供できるよう努めています。



(a) クリープ破断した試験片.

(b)光学顕微鏡で観察した金属組織.
図  SUS304HTB (18Cr-8Ni)の長時間クリープ破断試験片と試験後の金属組織(温度;700℃、応力;29MPa、破断時間;179368.0h).


line
トップページへ