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これまで作製されたナノメートル・スケールの構造は、単独構造が多かったのですが、デバイス化等の実用化には複数のナノ構造を組み合わせた機能階層化が必須であります。この一つとして、私達は、結晶内にクロス構造(配線構造)を目指す研究を行っています。 今回、シリコンをエピタキシャル成長させて、ビスマス原子細線を埋め込む技術を開発することに成功しましたが、これは、クロス構造作製のための第一ステップになります。ビスマス原子のサイズはシリコン原子より大きいため、ビスマス原子細線がシリコン結晶中に埋め込まれると大きな歪を生じますが、この歪によって、シリコンのエピタキシャル成長中に、ビスマス原子細線のビスマスが、成長中のシリコンと入れ替わります。この表面偏析現象のため、ビスマス原子細線は破壊され、シリコン中には埋め込めません。この問題を解決するために、一時的にサーファクタントと呼ばれる第3のプロセス材料(一原子の膜構造をとるビスマス)を利用しました。成長中、この層が常に表面に存在することで、表面偏析を回避することができ、ビスマス原子細線構造をシリコン中に埋め込むことが可能となるのです。結晶成長により原子細線を埋め込むことができたのは、今回の報告が初めてであります。 結晶中に埋め込まれた構造の観察は、表面のように直接観察できないため、一般的に難しいので、構造を破壊して電子顕微鏡で観察するなどの手法が良く用いられますが、試料作製時に微細な構造が破壊される可能性も高く、非破壊法でその構造を解明されることが理想的であります。非破壊法の代表である、これまでに確立されたX線技術と高輝度シンクロトロン放射光とを組み合わせても、今回対象としているようなナノ構造の構造評価は至難の業です。測定した試料では、1モノレイヤー(原子層1枚分)の約1/10とビスマス原子細線の体積が微量であり、信号強度が微弱すぎて構造を評価できませんでした。私達は、逆格子イメージング法を用いることで、検出感度の向上を図り、回折イメージを得ることに成功しました(図1)。実験で得られた構造情報を基にして、最適な原子構造をモデル化しました(図2)。 |
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