NIMS NOW


特集 ナノテクノロジーの基盤を支える
最先端電子顕微鏡技術

ここまで来た最先端電子顕微鏡
− 収差補正技術とインターネット活用技術 −
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超高圧電子顕微鏡ステーション
その場解析グループ
超高圧電子顕微鏡
ステーション
竹口 雅樹
三石 和貴
田中 美代子
古屋 一夫

 ナノ材料研究において、原子分解能で構造解析や組成評価が可能なツールとして電子顕微鏡の重要性はますます高まっています。私達のグループでは、電子顕微鏡の性能向上による究極のナノ解析技術開発と、広く大勢の研究者にそのような高性能電子顕微鏡の活用の場を提供するための技術開発の研究を行っています。
 電子顕微鏡の軸対称な磁界レンズでは原理的に収差は必ず正になり、光学レンズのように負の収差を持ち得ないために、複数レンズで収差を打ち消すことができないとされてきました。最近になって非対称な磁場によって収差を補正する技術の研究が進み、通常の高分解能観察に用いるための補正装置が実用化されはじめています。この技術は細く収束した電子ビームを形成するのにも適用されつつあります。最近、細く収束した電子を走査することで像を観察・分析する手法が注目を集めており、原子のサイズ以下にまで収束できれば原子分解能での走査像観察や分析が可能となるからです。私達は、図1のように高次の収差補正まで可能な12極子の収束系収差補正装置の開発を行っています。現在、これによって原子サイズに収束したままで従来よりも一桁以上強い電子線が得られることを確認しています。
 一方、操作・維持が容易ではない先端電子顕微鏡をできるだけ広く大勢の外部ユーザーに開放するため、私達はインターネットを利用した遠隔利用のシステムを開発しています。これは当機構にある電子顕微鏡にインターネット経由でアクセスすることでWEBブラウザから自由に操作できるシステムです(図2)。また、その応用として、この操作端末を平成15年からは文部科学省指定のスーパーサイエンスハイスクールに導入して授業やクラブ活動などでの利用が実用的に行われており、理科離れ等の問題からも、受け身学習から、よりインタラクティブな体験型の学習が人気を集めています。現在、高校生が自ら実験・野外実習などで得た試料をNIMSに送付し、その試料を自分で観察・分析する事を行っています。さらに、大学などの研究機関との遠隔利用による共同研究も行われ始めています。

図1
図2

図2  インターネット電子顕微鏡の概念図.
図1  収差補正レンズの模式図.


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