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特集 ナノテクノロジーの基盤を支える
最先端電子顕微鏡技術

超高圧電子顕微鏡ステーションの役割
− ナノテクノロジーと21世紀のための電子顕微鏡 −
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超高圧電子顕微鏡ステーション
古屋 一夫

 原子・分子を操る技術であるナノテクノロジーが注目されています。より正確に原子・分子を操るためには、その位置や状態を高精度・高速に観察・分析する必要があり、透過型電子顕微鏡の重要性はますます増大しています。特に高分解能観察画像からは、直観的に原子・分子の配列がわかるばかりか、同時に得られる分光学的データと組み合わせて、ナノ構造を総合的に解析することができます。
 超高圧電子顕微鏡ステーションは、「ナノテクノロジーと21世紀のための電子顕微鏡」をめざし、平成16年5月に設置されました。一般の研究機関では導入が難しい各種の透過型電子顕微鏡の先端的技術開発とそれらを用いた先導的材料研究、ナノテクノロジー研究者への装置の解放・共同利用を主なミッションとして研究活動を行っています(図参照)。
 先端技術開発では、(1)電子線・イオンの照射下、種々の環境条件での動的オンライン観察技術開発、(2)電子レンズの収差を補正することで、より高い分解能と高強度・高品位電子ビームを得るための技術開発、(3)エネルギーフィルター電子顕微鏡による電子状態の可視化技術、(4)インターネット技術を利用することで電子顕微鏡を遠隔操作し、多くの研究者や学生が共同実験・教育活動に有効に利用するためのシステム開発を行っています。
 先導的材料研究では、(1)収束した高強度の電子ビームを用いた1nmオーダーの金属・半導体の任意ナノ構造の微細加工と特性評価、(2)表面帯電を利用したナノ樹木金属構造の作製と表面効果材料への応用、(3)酸化物超伝導体や強相関電子系材料の結晶構造や局所欠陥構造の解析、(4)ローレンツ電子顕微鏡による強磁性体の磁気構造観察を行っています。
 共同利用では、文部科学省の「ナノテクノロジー総合支援プロジェクト・超高圧電子顕微鏡による解析支援」の中で、幹事機関として、2台の超高圧電子顕微鏡をはじめとする特徴ある透過型電子顕微鏡群を外部開放し、一般のナノテクノロジー研究者に利用の機会を提供しています。観察に際して必要となる電子顕微鏡試料の作製および観察結果を解析するための画像解析等、実験のそれぞれの段階において総合的な技術支援を行っています。
 21世紀は、「科学技術が社会と調和をとりつつ」発展していく世紀であり、電子顕微鏡技術は単にツールとして科学技術に貢献するのではなく、成果の普及や教育の場での活用を通じて、社会全体に広く貢献できると信じています。

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図   超高圧電子顕微鏡のミッション.


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