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特集

無加熱基板上への光触媒薄膜形成
−防汚ガラス・プラスチックの実現へ向けて−
物質研究所
プラズマプロセスグループ
亀井 雅之

 光触媒という言葉は最近家電製品の機能説明等にも散見されるようになってきました。光触媒による脱臭効果が他に先駆けて実用化されたようですが、最も市場の大きな光触媒材料の応用として防汚効果が挙げられます。これは紫外光線が光触媒材料表面に照射されると表面の汚れが分解されて除去され、材料表面が清浄化されるというものです。これをビルの窓ガラスに応用すれば危険な高層ビルの窓ガラス清掃作業を追放することができます。また汚れの付着しやすいプラスチック表面も清浄に保つことができます。
 しかし、大型ガラスやプラスチック表面に光触媒作用を持たせることは容易ではありませんでした。光触媒作用を担っているのは二酸化チタンという結晶材料です。汚れないガラスやプラスチックの実現にはこの結晶材料をガラスやプラスチック表面にコーティング膜として形成する必要があります。従来このコーティング膜を結晶化させるのに数百℃の高温が必要でした。ところがガラスを数百℃に加熱すると割れてしまいますし、プラスチックは変形あるいは変質してしまいます。このため光触媒作用を持つ建築用窓ガラスやプラスチックの実現のためには、窓ガラスやプラスチックが割れたり変形したりしない温度で光触媒二酸化チタンコーティングを形成する技術の確立が必須でした。
 本研究ではバイポーラマグネトロンスパッタリング法という新しいコーティング手法を用いることで、二酸化チタンコーティング膜を無加熱でPET(ペットボトルの材料)樹脂フィルム上に形成することに成功しました(図1)。またこのコーティング膜の光触媒活性も銀イオンを用いた光還元による手法で測定してみた結果、良好な高触媒活性を示すことを確認できました(図2)。この技術は防汚ガラス・プラスチックの実現につながるものと期待されます。

図1  PET樹脂フィルム上に形成した光触媒二酸化チタン膜.
図2  無加熱ガラス基板上に作成した二酸化チタン膜の光触媒効果を利用して浮かびあがらせたロゴマーク.


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