NIMS NOW 2005.Vol.5 No.11 November

　磁気のミクロな世界を見る顕微鏡として、磁気感度の優れた超伝導量子干渉素子(SQUID)を用いた走査型SQUID磁気顕微鏡の開発を進めています。
　SQUIDは、地磁気の1億分の1程度の非常に微弱な磁気を検出する磁気センサです。液体窒素冷却により、比較的簡便に取り扱える高温超伝導SQUIDの開発が進み、その応用研究が進んでいますが、私達は、この高温超伝導SQUIDを使った磁気顕微鏡を開発しました(図1)。SQUIDは数mmの大きさがあり、磁気の空間分解能を高めることが難しいため、SQUIDと組み合わせて、磁気を通しやすい材料を鋭くとがらせた針をプローブとして用いる方法を考えて利用することで、磁気に対してミクロンの空間分解能を実現することに初めて成功しました。さらに、得られた磁気イメージを鮮明に表現するための、画像処理プログラムを開発しました。図2には旧千円札の一部を光学的に観察したものと、今回開発した磁気顕微鏡で見たものを示しています。磁気インクが使用されているために、印刷部が磁気的にも明瞭に観察できました。
　このSQUID磁気顕微鏡は、磁気材料などの研究に活用できることはもちろんですが、ICなどに流れる微小な電流を磁気的に捕らえることができるので、ICの非破壊検査などへの応用も考えられます。
　今後さらに、空間分解能を高める研究を進めるとともに、ミクロな磁気の世界をいろいろ分析したいと、研究を進めています。