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超伝導体は電気抵抗が限りなくゼロに近いことから、大電流を必要とする送電線や超伝導磁石等に用いられます。超伝導体に電流を流すと自己磁場等によって磁場が侵入し、量子化された磁束線となります。この磁束線が電流によって力を受け、超伝導体内を移動することで抵抗を発生します。超伝導材料の応用はこの磁束線の移動を如何に抑えるかにかかっています。このために磁束線を止める“ピン”を導入します。ピン止めにはいろいろな種類が考案されていますが、位置、形等が制御されているわけではありません。人工的に制御されたピン止め中心を導入し、応用に適したピン止めを探ることが私達の研究目的の一つです。 図1に収束イオンビームを用いてビスマス系超伝導体単結晶薄膜に直径300nmの孔を格子状に配列した写真を示します。各孔は1μmずつ離れています。この孔に磁束線が一本ずつ入った時の磁場は20.7Oeに相当します。図1のように、この試料に磁場をかけ電流を流すと磁束線はローレンツ力で動き、抵抗を発生します。この抵抗を測定した結果を図2に示します。ちょうど、20.7Oeの整数倍に抵抗の折れ曲りが見られます。試料の温度を−199℃(74K)から−193℃(80K)まで上げても明瞭に折れ曲りが見られます。これは超伝導体内の磁束線が格子状孔配列に従って規則的に分布していることを示しています。 図3にビスマス系超伝導体の磁束線状態の概略図を示しましたが、この温度領域で多体系としての磁束線は固体から液体状態に移ることが知られています。格子状孔配列を導入することで液体状態であった領域でも固体のような磁束線の規則的配列が実現されていることになります。 このようにナノサイズの加工により超伝導体の性質をコントロールできることから、新規な現象を探索し、将来の超伝導体応用を目指しています。 |
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