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特集 持続可能な社会形成を支える
ナノテク・材料研究 IV

ナノ組織制御による
高強度軽量金属材料の開発
− 運輸機関などの飛躍的な軽量化に期待 −
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エコマテリアル研究センター
軽量環境材料グループ
エコマテリアル
研究センター
環境循環材料グループ
材料研究所
ナノ組織解析グループ
向井 敏司
染川 英俊
大澤 嘉昭
宝野 和博

 輸送機関構造材料の軽量化によるCO2ガス削減や資源生産性の観点からリサイクルにも有利な軽量金属材料であるマグネシウム合金が注目されています。マグネシウム合金は溶解して固めた状態では強度が低く、大変脆いため、様々な構造用途に展開させるためには、使用に際しての安全性を保証する高強度と延性や靭性の改善が必要となります。 
 私達は、マグネシウム合金の内部組織を種々のスケールで見直し、改善に有効な構成要素の検討に取り組んでいます。例えば、マグネシウム合金はその他の金属材料と同様に結晶の集合体で出来ていますが、結晶構造が異方性を有するため、結晶内部で原子が密に並ぶ結晶面がどの方向を向いているかによって、強度や変形しやすさが大きく異なります。そのため、結晶の方向を制御することが改善指針の一つとなります。
 また、結晶サイズを微細化することで、飛躍的な高強度化と同時に変形の不均一性が解消されることがわかりました。例えば、結晶サイズを1μm以下、すなわちナノメートル・オーダーまで微細化すると、従来合金と比較して2倍の高強度を示し、同時に延性も損なわないことがわかりました。
 さらに、図1に見られるように、結晶内部や結晶間の境界に形成される金属間化合物粒子(図中矢印)をナノメートル・オーダーで球状化させ、均一分散させることで、強度のみならず、延性や靭性を高くすることが可能であることも明らかになりました。ここで重要なことはこのナノ粒子が、どの元素でどのような形態で配列されているかを知ることです。私達は3次元アトムプローブを用いて、最適な原子の組合せについて検証を進めています。例えば、図2に示すように、CaとZn原子の配列が最適化されることにより、少ない合金元素の添加でも高強度化を図ることが可能であることがわかってきました。
 以上のように、ミクロン・オーダーから原子のオーダーまで、改めて材料の内部組織を見直すことにより、従来にない高性能な軽量金属材料の開発研究を進めています。

図1
図2

図2  強化粒子の構成原子マッピング例
(Mg-0.3Zn-0.3Ca (at.%), 473K, 60ks時効材).
図1  ナノ球状粒子分散マグネシウム合金の例
(Mg-1.8Zn-0.3Ca (at.%) 押出材).


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