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ごく近い未来に来る高密度化の限界を越え革新的なデバイスを開発するためには、新しい回路素子の発見とそれを実現する微細加工技術が不可欠です。ナノスケールの太さしかないDNAの塩基配列を設計することで加工無しにさまざまな構造をつくることができます(自己組織化)。本来絶縁体であるDNAに伝導を担う粒子を導入し、高い伝導性を示す方法が確立されれば革新的なナノスケールの分子デバイスを開発できる可能性があります。 今回の研究において、水が周囲にあるときに金属イオンに存在していた正孔が、水を取り除いた結果DNAの塩基に導入されることが分かりました。(図1)この電気伝導機構はシリコンに不純物を導入して半導体化させる機構と似ています。不純物を導入したシリコンでは不純物を増やすほどよく電気が流れるようになり、半導体化したDNAの場合もシリコンと同様に導入する正孔の数が多いほど電気が良く流れます。 DNAの持つ自己組織化能と半導体化機構を用いることにより、ナノメートルサイズの微細トランジスタを構成できる可能性があります。まず、特定の形に自己組織化するよう設計した塩基配列を持つDNAを水中で設計した形に自己組織化させます。半導体化させる金属イオンをまぜておき、水から取り出し乾燥させます。以上のプロセスだけで三次元形状のナノ構造体が出来上がることになります。たとえば、シーマンの立方体と呼ばれるDNAナノ構造を組み合わせるとDNAによる三次元ナノクロスバーサーキットができあがることになります(図2)。バイオテクノロジーとナノテクノロジーの融合により、現在の高密度化限界を超えたナノ分子デバイスの作成が期待されます。(本研究は産業技術総合研究所、東北大学との共同研究です。) |
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