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新世紀耐熱材料プロジェクトでは、国内および海外のジェットエンジンメーカーと協力して開発Ni基超合金を高温高圧タービン翼に適用し、エンジン効率を向上させ、CO2削減や燃費向上に役立てるための研究を行っています。並行して、エンジンを使用する立場の航空会社との協力をNEDOの支援を得て新たに開始しましたので、その研究の一部をご紹介したいと思います。 ジェットエンジンの燃焼ガス温度は、離陸時の約2分間に最高となり1500〜1600℃に達します。この燃焼ガス流の方向を変えるためのタービン静翼(回転しない静止翼)、ガス流を受けて高温高速回転するタービン動翼などには、融点が1350℃程度のNi基単結晶超合金がその内部を空冷し、表面にセラミックコーティングを施して使用されています。離着陸の繰返しにより、これらタービン部材は次第に劣化・損傷しますが、損傷を受ける前に、あるいは損傷が起きてもそのごく初期に兆候を発見し部材交換、補修などを行うことにより安全な飛行が可能となっています。 しかしまれに予期せぬ損傷を受けその原因究明が必要な事態も発生します。図1はそのような損傷を受けたあるエンジンの高温高圧第一段静翼です。エンジン高温高圧部の動翼、静翼は、図2のエンジンでは左側より第一段、第二段、第三段の順になっています。新世紀耐熱材料プロジェクトではこのタービン静翼の断面のミクロ組織観察や組成分析を行って損傷の原因を解析しました。その結果、タービン翼の表面温度が設計値以上に上昇したため、セラミックコーティングとその下地の金属コーティング(ボンドコートと呼ばれる)の界面での酸化が促進され、セラミックコーティングが剥離、露出した金属コーティングとその下地のNi基単結晶超合金の温度が離陸のたびに大きく上昇して熱疲労を生じたものとわかりました。現在このタービン静翼は表面冷却(フィルム冷却と呼ばれる)をより強めることにより安全に使用されるようになっています。 新世紀耐熱材料プロジェクトでは、これ以外にも異なった機種の種々のエンジン部材を解析しています。これらの研究は、航空機の安全性確保に貢献するだけでなく、実際のエンジンでの部材の使用条件や損傷のメカニズムを理解し、新合金開発に反映するためにも非常に有用なものとなっています。 |
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