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研究最先端

水溶性シリカ系材料の合成

− ナノ高次構造をもつロッド状酸化ケイ素 −
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現 鹿児島大学 大学院理工学研究科
旧 物質研究所 光学単結晶グループ
物質研究所
光学単結晶グループ
金子 芳郎 井伊 伸夫

 ガラスやシリカゲルなど、ケイ素(Si)原子と酸素(O)原子から構成された骨格をもつ物質(酸化ケイ素)は、通常、水に溶解することはありません。これは、Si原子とO原子の化学結合(シロキサン結合)からなる構造が三次元的に巨大であるためです。シロキサン結合を骨格に持つこれら物質は、無毒であり透明性にも優れているため、食品等の乾燥剤(シリカゲル)や容器(ガラス)等、広く一般に利用されている一方で、これらの性質より、様々な機能を持つ有機化合物とのハイブリッド化が近年強く望まれています。しかしながら、上記のように水をはじめとする各種溶媒に溶解しないため、ハイブリッド化するための化学反応を均一溶液中で行うことができず、穏和な条件下では均一な材料になりにくいという問題があります。水に溶解するシリカ系材料の開発は、この問題を解決する1手法であると考えられます。
  私達は、反応中にイオン性の置換基へと変換するアルコキシシラン原料を用いて重合(ゾル-ゲル反応)を行い、水溶性のシリカ系材料の合成に成功しました(図1)。すなわち、酸性条件下でアンモニウムイオンとなる置換基(アミノプロピル基)がついたアルコキシシラン分子を用いてゾル-ゲル反応を行ったところ、SiとOからなるネットワーク結合は一次元方向にのみ成長し、その結果ロッド状のシリカ系材料が得られました(図2)。これはイオン性の置換基の働きによって、原料が反応溶媒(水)中でロッドの形に組織化され、この状態で反応が進行したためだと推察しています。この材料は、固体状態では直径約1ナノメートルのロッド状ポリマーの規則的な積層構造体ですが、表面にイオン性の置換基を有するため水との親和性が良く、水中ではこのロッドが分散し、その結果、水溶性を示したものと考えています(図2)。今後、本材料を用いた多種多様な無機-有機ハイブリッド材料の合成を行っていきたいと考えています。

図1
図2
図1  ロッド状シリカ系材料の20wt%水溶液.
図2  ロッド状シリカ系材料の合成と水への溶解を表したイメージ図.


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