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高集積化がすすむ集積回路ではさらなる微細化とそれに対応する新材料が求められています。いくつかの課題の中でもっとも緊急性が求められているのが次世代ゲート酸化膜材料と金属ゲート材料です。ゲート酸化膜に関しては近年の研究からHfO2系酸化物が最も適していることがわかっていますが、ゲート材料に関してはまだ方向性がみえていません。電界効果トランジスタ(MOSFET)動作のOn-Offを制御するしきい値電圧Vthはゲート材料の仕事関数で制御しますが、pMOS、nMOS用には異なる仕事関数の材料を用いる必要があります。そのために金属材料による仕事関数制御の可能性が話題になっています。材料の選択にはいくつかの指針があります。まず、仕事関数制御のためには仕事関数の大きな材料と小さな材料の中から材料を選び、それを合金化し、幅広い値の制御をめざします。しかし、これらの金属材料はゲート酸化膜との反応性の少ない物を選ぶ必要もあります。また、連続した組成の制御を考えると中間層の少ない材料の組み合わせも考える必要があります。これらの条件を満たす材料としてここではPtとWを取り上げ、それらを使って仕事関数の制御が可能かを調べました。 試料作製にはイオンビームスパッタ法と組み合わせたコンビナトリアル手法を用いました。イオンビームの加速エネルギーは5kV、電流は20μAのArイオンを用いています。この方法で20nmの膜厚のPt-Wの連続組成傾斜膜を作製しました。この試料の各点に於ける組成と仕事関数の測定はX線光電子分光法で行いました。 図にこの試料の概念図、光学写真それに組成変化、仕事関数の値を示します。PtからW領域にかけて組成が徐々に変化していることがわかります。その値は5.5eVから4.7eVまで変化し、その差は0.8eVです。実際に必要な仕事関数制御は1.1eVとされていますからこの組み合わせはほぼ必要な条件をみたしており、しきい値電圧を制御することが可能になりました。 また、別の実験で薄膜の仕事関数は膜厚が10nm以上でほぼバルクの値に近くなることもわかりました。これは45nm〜32nmゲート長世代の集積回路では金属ゲートを用いたMOSFETが作製可能であることを示唆しています。 |
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