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特集 学際領域研究開発II
“ナノ・IT分野”における技術革新

緒 言
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ナノマテリアル研究所
青野 正和

 先般、東京ビッグサイトにおいて、ナノテクノロジーに関する世界最大の総合的イベントである“ナノウィーク(2/21〜2/25)”が開催されました。産、学、官のさまざまな機関や組織が種々のフォーラムや展示会を開催あるいは共催し、かつ世界の各国がそれぞれのイベントを併催したり、調査団を関連の研究機関に送ったり、大使館で交流会を催すなど、活発で意義の深い一週間となりました(当機構はこのイベントの開催に中心的な役割を果しました)。展示だけに限っても、300以上の企業や団体が出展し、その3割近くは外国からのものであり、世の中のナノテクノロジーに対する関心の高さと、外国が日本をナノテクノロジーのパートナーまたはコンペティターと見ている熱い視線を強く感じさせるものでした。
  このような機会に「“ナノ・IT分野”の革新技術」に関する特集が本誌において組まれることは時を得ています。IT(情報技術)はナノテクノロジーと不可分であり、ナノテクノロジーなくしてはITの発展も我が国が目指している高度情報化社会の構築も望めません。ナノテクノロジーは、IT、バイオ、エネルギー、環境など、多くの分野に革新をもたらす普遍的技術ですが、ナノテクノロジーにとって最大の目標は、ITに革新を起こすことにあると言っても過言ではありません。
  ITおよびコンピューター技術を支えるエレクトロニクスデバイスの進展の歴史が図に模式的に示されています。1947年に発明された半導体トランジスターは、約10年後に「集積」の概念が導入され、そのあと約半世紀にわたって高集積化の一途を辿ってきました。その進展はムーアの法則(集積度は3年で4倍)として知られています。しかし、その進展は近い将来に限界に達します。これまで中心的な役割を果たしてきた電界効果トランジスターの微細化が原理的な限界に達するからです。したがって、コンピューターエレクトロニクスの発展をさらに持続するためには、新しいナノエレクトロニクスデバイスを積極的に開発し、できるだけ早く実用化へのロードマップを描かなければなりません。そのいくつかの可能性が図の右下および表紙写真上などに示されています。
  この特集では、ナノマテリアル研究所の最近の研究から、上で述べたことに関連した5つのトピックスを取り上げました。5番目のトピックスは、新しい計測手法に関するものですが、今後のナノエレクトロニクスデバイスの開発にとって威力を発揮するはずなので取り上げました。

図1
図  エレクトロニクスデバイスの進展.


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