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特集 学際領域研究開発I
“ナノ・バイオサイエンスの新展開”

毒か薬か、みどりの光で
知らせるセンサー細胞
 
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生体材料研究センター
細胞基盤技術グループ
谷口 彰良 和田 健一

  細胞はさまざまな環境のわずかな変化に敏感に応答する能力を持っています。この細胞が持っているセンサー能力を医薬品、生体材料の安全性評価に応用して、従来技術では不可能であった高感度な生物情報を多角的に得る機能化細胞を作成しています。
  私達はこの機能化細胞を用いて細胞毒性を高感度に測定する方法を開発しました。ストレスタンパク(HSP70B , )の発現をコントロールしている遺伝子のプロモーター(遺伝子のスイッチ)とホタルやクラゲの発光・蛍光タンパクの遺伝子を融合し、ストレスに応答して蛍光を発する細胞を作成しました。この細胞にストレスを与えるような刺激をするとホタルやクラゲの発光・蛍光タンパクの遺伝子のスイッチをオンにして光ります。細胞毒性を示す物質として塩化カドミウムを用いてこの方法の感度を検討しました。その結果、既存の細胞死を用いて細胞毒性を判定する方法より5倍以上高感度でした。また、この方法は細胞が死ぬ前に測定できるため、細胞死を判定する方法より迅速に判定できました。
  このほかに現在2種類のセンサー細胞を開発中です。3種類のセンサー細胞はそれぞれ異なった遺伝子発現誘導に基づいていますので、細胞毒性のメカニズムの分類ができます。すなわち、従来の細胞死による毒性評価では区別することができなかった細胞毒性の種類を明らかにできるので、毒物の細胞に与える影響についてより詳細な情報が得られると期待されます。例えば、細胞毒性の強い制ガン剤をこの方法で分類すれば細胞毒性の原因別によりこまかく分類することができます。この技術は動物実験に代わる評価方法として期待されます。

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図  毒性感知して光る細胞.調べたい検体を添加後、検体に毒性があれば約8時間で光る.


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