NIMS NOW


特集 学際領域研究開発I
“ナノ・バイオサイエンスの新展開”

バイオマテリアル
− 新学際領域と将来展望 −
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生体材料研究センター
田中 順三

 生体材料は、材料科学と生物学・医学がオーバーラップした典型的な境界領域の研究です。しかも、最近の再生医学の進歩により、研究の初期から臨床医学と強く連携することが求められるようになりました。
 物質・材料研究機構 生体材料研究センターでは、平成16年から新しいプロジェクト「革新的ナノ薬物送達システム(DDS:薬物送達システム(Drug Delivery System))のための担体材料開発」をスタートしました。このプロジェクトは、材料・薬学系研究機関(NIMS・東京大学工学研究科・京都大学薬学研究科)と医学系研究機関(北海道大学獣医学部・東京大学医学部・筑波大学医学部・東京医科歯科大学)が連携して研究を進めています。
 ガン・肝炎・遺伝子疾患・生活習慣病などの難治性疾患を治療する新しいDDS製剤を開発することが目的です。クスリは、例えば肝臓・すい臓などの病気になったところに必要な量を必要な期間だけ投与すれば十分のはずです。しかし実際には、注射をするとクスリは全身をまわり、注射した直後は血液中のクスリの濃度は非常に高くなって場合によっては副作用を起こしたりします。そこで、副作用を抑え薬効を高めるためのDDS製剤を開発しています。例えば、C型肝炎を治療するためインターフェロンを長期間徐放できるタンパク製剤(図1)、遺伝子疾患を治療するため血中で不安定な核酸を安定化する標的性ナノ製剤(図2)、転移性骨肉腫を治療するセラミックス系抗ガン剤などを開発しています。

図1
図2
図1  生活習慣病を治療するための長期徐放性製剤:2週間以上にわたってクスリを徐放する製剤ができつつあります.
図2  ガンを治療するための標的性製剤:周囲に比べて病変部に5倍ほど高く集まる製剤を作っています.


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