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私達はこれまでに液体ガリウムを含んだカーボンナノチューブが温度計として利用できることを見出し、ナノ温度計と命名しました。ナノ温度計はチューブ内に閉じ込められた液体ガリウムが温度変化による体積膨張・収縮によりその液柱の長さを増減させ、その長さから温度が測定できる原理であり、室温から約500℃の高温までの温度測定が可能であることを既に報告しました。ナノ温度計は世界で最小の温度計としてギネスブック(2004年)に掲載されています。今回、私達はチューブ内の液体ガリウムが室温以下の低温状態においても体積膨張・収縮する現象を見出しました。 図1は多層カーボンナノチューブ(直径が約100nm)のチューブ内に含まれた液体ガリウム柱が室温から、−40℃、−80℃へと冷却すると、温度低下とともにその液柱の高さが変化してゆく過程を示した電子顕微鏡写真です。面白いことに、液体ガリウムは室温以下でも液体状態であり、−80℃の温度ではじめて液体から固体に変化します。再び加熱すると、−20℃で液体に戻ります。このような温度変化による液体ガリウム柱の増減を電子顕微鏡観察により定量的に調べた結果を図2に示しました。液体ガリウムの冷却・加熱によるヒステリシス効果が現れ、過冷却現象が起こっています。この現象は液体ガリウムがカーボンナノチューブ内に閉じ込められていることに起因しています。 今回の実験から、ナノ温度計は500℃までの高温測定に利用できるだけでなく、−80℃までの低温での温度測定にも利用できることが明らかとなりました。実用化には最高温度や最低温度をどのようにして記録するかが大変に重要です。最近、チューブ内のガリウム柱の先端表面を酸化させることで最高温度を記録できることがわかりました。ナノ温度計はミクロン以下の局所空間での温度計としてナノテクノロジーの研究分野には不可欠です。今回の低温測定が可能なナノ温度計の開発の成功は、ナノ温度計の温度計測範囲を高温領域から低温領域にまで拡大でき、ナノ温度計の将来の応用範囲が一段と広がると期待されます。 |
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