無限の広がりを予感させる
新規ナノチューブ研究

半導体ナノチューブの創製
− Siのナノチューブとマイクロチューブ −

若手国際研究拠点

Junqing Hu

  板東 義雄

 カーボンナノチューブはその性質が金属的、半導体的に変化することは良く知られておりますが、現状ではまだそれを制御する合成技術が確立されておらず、半導体だけのカーボンナノチューブを選択的に合成することは困難です。もし、カーボンナノチューブ以外で半導体のナノチューブが合成され、それが超微細線として利用できるようになると、電子回路のミニチュア化が一段と進み、半導体の高密度集積化や高速かつ低消費電力のデバイスが可能となります。
 私達は半導体材料のナノチューブの創製を行っています。最近、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)などのナノチューブ化に成功しました。
 図1はSiナノチューブの合成方法を示したものです。まず、単結晶の硫化亜鉛(ZnS)の細い針(ナノワイヤー)を作ります(直径が約50nmで長さが数μm)。この表面にSi膜をコーティングし、ZnSとSiからなる2層のコアー型のナノワイヤーを作ります。SiはZnSと結晶構造が良く似ているので、Siのナノワイヤーもまた単結晶となりやすい特徴があります。その後、ZnSを塩酸で溶かすと、Siのナノチューブ(直径約100nm)ができます(表紙写真上及び図2)。電子回折や格子像の観察から、Siナノチューブは単結晶であることが確認されました。これは世界で初めての成果です。Siナノチューブの構造はバルクと同じsp3原子配列をしています。
 図3はSiのマイクロチューブのSEM写真です。SiO粉末を1650℃の高温で熱分解させると生成します。チューブ直径は約1〜5μmで長さが数μmです。ナノチューブと異なり、マイクロチューブ壁は非晶質のSiからできています。現状では、Siのナノチューブもマイクロチューブも収率が約10%以下と悪く、新規な合成法の開発が不可欠です。また、理論的にその存在が予想されるsp2の原子配列を有するSiナノチューブの創製も今後の大きな課題といえます。
 Siのナノチューブやマイクロチューブは半導体の性質を活かして、超微細細線等としてエレクトロニクス分野への応用が期待できるだけでなく、その特異な細孔を活かして、触媒、フィルター、バイオセンサー等への幅広い応用が期待できます。

図1 Siのナノチューブの合成方法.

図2 Siナノチューブの高分解能電子顕微鏡写真とその電子回折図形.

図3 Siのマイクロチューブ.


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