インターネット電子顕微鏡、教育現場へ
−いつでも・どこでも・だれでもインタラクティブに−

超高圧電子顕微鏡ステーション
その場解析グループ

古屋 一夫   田中 美代子   溜池 あかね

 青少年の理科離れが叫ばれて久しいなか、実際に目で確かめることができるような、インターネットを通じて行うインタラクティブコンテンツが教育現場で人気を集めています。教科書中心の「受け身学習」でなく、「調べ学習」「発見学習」を行い、科学技術への興味を引き起こすものとして期待されています。
  今回私達が開発した「インターネット電子顕微鏡システム」も、教育効果に関するポテンシャルの高さから、注目を集めています。これは、NIMSにある電子顕微鏡に、インターネット経由でwebブラウザからアクセスし自由に操作することを目標に開発したもので、これまで東京・お台場の日本科学未来館で試験運用を行ってきましたが、この度、文科省指定のスーパーサイエンスハイスクール2校へ導入を行いました(図1)。
  電子顕微鏡は、光学顕微鏡の数百倍から数千倍の分解能を持ち、先端研究に必要不可欠な実験機器です。一般の教育現場に登場することになれば、科学的好奇心が喚起されると思われます。しかし、電子顕微鏡は非常に高価な装置で、保守・運行に高度な専門知識が必要ですので、これまで教育現場では目にすることがありませんでした。
  私達は、多様なネットワーク環境で、安全かつ快適に電子顕微鏡を操作することができるような電子顕微鏡の遠隔操作ネットワークシステムを構築しました。利用者は、インターネットに接続できる環境とパソコンがあれば簡単にアクセスできるので、高価な設備の購入や、メンテナンスに気をとられる必要がありません。一般の教育現場、一般家庭、さらには世界各国から、「いつでも・どこでも・だれでも」電子顕微鏡を操作することが可能となったのです(図2)。
  今回導入したシステムは、授業やクラブ活動等で活用され始めており、また高校生側で興味のある試料をNIMSへ送付し、その試料を観察することも行っています。このように、先端設備を実際に操作することで与えられる教育効果は非常に高く、本研究成果が科学技術教育全般に与えるインパクトは非常に大きいものと思われます。

図1 インターネット電子顕微鏡を操作する高校生.

図2 インターネット電子顕微鏡の概念図.



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