ものづくり最先端II

太陽光ブラインド紫外光センサー

物質研究所
スーパーダイヤグループ

小出 康夫


 私達のグループでは実用化・工業化を目指してダイヤモンド半導体を紫外光センサーに応用する研究を展開しています。図1に示すように、太陽光線に含まれる紫外線(波長190〜400nm)の内、190〜280nmの紫外線は地球上空に存在するオゾン層に吸収されるため、地表には届かない紫外線で、“深紫外光”と呼んでいます。更に、この深紫外光のみ選択的に検知する光センサーを、私達は“太陽光ブラインド紫外光センサー”と呼んでいます。
 太陽光ブラインド紫外光センサーは、太陽光線が存在する環境下においても、深紫外光と同じ波長である火炎やNOxおよびCO2等の有害物質の蛍光スペクトルを検出する光センサーとして応用が期待されます。特に固体素子として小型で且つ熱安定な火炎センサーが実用化されれば、エンジン内燃焼状態の自動制御に利用することが期待され、耐環境負荷の小さな次世代エンジンの開発につながる夢の光電子デバイスでもあります。
 本研究では、図2に示すように、気相成長法によりボロンを添加したダイヤモンド単結晶薄膜を成長させ、金属/ダイヤモンド/金属構造から成るセンサー構造を作製しました。バンドギャップ程度以上のエネルギーを持つ紫外光により励起された電子―正孔対に起因する光電流がセンサーの金属電極間に流れます。これは、太陽電池の原理と同じです。図2に、この紫外光センサーの光応答特性を示します。図には量子効率100%を仮定した時の受光感度の理論曲線も示してあります。図から量子効率約20%および紫外(220nm)/可視光(400nm)ブラインド比(その波長における光電流の強度比)約2.5桁を持つ太陽光ブラインド紫外光センサーの開発に成功しました。市販されているシリコンセンサーでは可視光を検知することなく260nm以下の深紫外線を検出することは不可能です。今後、電極材料の選定やセンサー構造の最適化をはかることによって、受光感度特性の向上をはかることを目指しています。

図1 地表上の太陽光線スペクトルの説明図.
図2 開発したダイヤモンド紫外光センサーの表面写真および光応答特性.

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