ものづくり最先端II

結晶構造と電子・原子核密度の
三次元可視化システムVENUS

物質研究所
先端結晶解析グループ

泉 富士夫


 VENUSは
結晶構造(配位多面体、棒・球棒・空間充填・針金模型、点表面、熱振動楕円体)と磁気構造(磁気モーメント)、
X線・中性子回折データから決定した電子・原子核密度、パターソン関数など、
電子状態計算プログラムで求めた電子密度、波動関数、静電ポテンシャルなど、
を対象とする三次元可視化システムです。球棒・棒模型と等値曲面の重ね合わせ表示も可能です。OpenGL対応のビデオカードを搭載したパソコン上で威力を発揮します。
 VENUSは商用ソフトを凌駕する高い機能を誇っています。たとえばCIF、PDBなど23種類の結晶データファイルを読み込め、TIFF、EPS(ベクトルデータも可)など10種類のイメージファイルを書き出せます(表紙写真上)。4つの回転モードと自動原子サーチ機能を備えており、対称操作、原子間距離、結合角、配位多面体の歪みパラメーター、bond valence sumなども表示できます。
 VENUSは最大エントロピー法(MEM)プログラムPRIMAも含んでいます。PRIMAは従来のソフトに比べ数10倍のスピードでX線・中性子回折データのMEM解析を実行できます。多目的パターンフィッティング・システムRIETAN-2000とVENUSとの連携によりリートベルト解析における構造モデルの修正や電子・原子核密度分布の決定(図)が手軽に行えるようになりました。
 VENUSは物質・材料の結晶構造および電子構造を3次元的に理解し、研究者の創造性を拡大するためのツールとして多くの研究に貢献すると確信しています。VENUSは無料ソフトウェア(http://homepage.mac.com/fujioizumi/で配布)ですから、物質構造に関する教育にも向いています。

図 超伝導Co酸化物の放射光粉末回折データからPRIMAで求めた電子密度の3次元表示.



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