ものづくり最先端

クリープ試験材の微細組織写真集
の作成とデータベース構築

材料基盤情報ステーション
材料データベース研究グループ

田中 秀雄

 

村田 正治

 

上平 一茂


 クリープデータシートプロジェクトにおいて、種々の高温用構造材料の長時間クリープ試験を系統的に実施し、膨大な数の破断試験材を得ています。クリープとは、高温で力を加えると材料が時間の経過とともに徐々に変形し、最終的に破断に至る現象をいいます。20万時間(約23年)に及ぶこれらのクリープ破断試験材の微細金属組織を明らかにし、「クリープ試験材の微細組織写真集」の作成を進めています。
 これまでに、高温構造物の材料として広く使用されているオーステナイトステンレス鋼のSUS304 (18Cr-8Ni)、SUS316 (18Cr-12Ni-Mo)及びSUS321(18Cr-10Ni-Ti)について、図1に示すように、印刷物及びCD-ROMとして微細組織写真集を出版しています。本写真集には、光学顕微鏡組織写真を中心に、走査型及び透過型電子顕微鏡組織写真、さらに、硬さ、析出物のサイズや化学組成、クリープ損傷の形態、破壊様式等の微細組織に関連したデータ・情報を併せて掲載しています。図2はSUS321鋼の550〜750℃の温度において約300〜15万時間で破断した試験材の光学顕微鏡組織の一例です。微細組織が温度や時間によって大きく変化する様子がみられます。このような広範かつ実機使用条件となる長時間までにわたって微細組織とその関連情報をまとめたものは他に類がなく、長期間使用された高温構造部材の材質劣化評価や寿命・余寿命評価のための参照データとして活用され、高温プラントの信頼性の向上に大きく貢献しています。
 さらに、写真集の作成で得られた微細組織写真画像や微細組織の関連データを基に、クリープ特性―微細組織―微細組織の評価データを相互にリンクさせた「金属組織データベース」の構築を進めています。

図1 クリープ試験材の微細組織写真集.

図2 クリープ破断試験材の光学顕微鏡組織一覧.


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