ものづくり最先端

複合材料熱物性予測
Webシステムの開発

材料基盤情報ステーション
材料データベース研究グループ

徐 一斌   山崎 政義   八木 晃一

  熱伝導、熱膨張などの熱物性は、工業材料を開発するときに、欠くことのできない重要な基礎特性です。複合材料は、複合材料を構成する材料の選択と構造を工夫することにより、熱物性を制御することができます。そのため、エレクトロニクス実装や放熱材料、自動車のブレーキディスク材料などに応用できる新素材として注目されています。しかし、材料や構造の選択は無限の組み合わせを取り得るため、組み合わせを変えて実験する方法では複合材料の開発に対処できません。このため、最適な複合材料の材料及び構造の候補を探し当てるために、それらの最適値を決定できるシミュレーションシステムが必要です。
 そこで私達は、複合材料を構成する材料と構造の単位要素を設計し、その単位要素について熱物性を予測できるWebシステムを開発しました。本システムは、複合材料熱物性知識ベース、熱物性予測システム、材料熱物性データベースから構成されています(図)。複合材料熱物性知識ベースは、複合材料とその熱物性に関する基本概念、方程式及び概念間の関連性を収録していて、複合材料熱物性予測のための基礎知識を提供します。熱物性予測システムは、解析法と数値法(有限要素法)の二つのサブシステムを持ち、解析法は計算速度が速いことから、複合材料設計での初期段階において、その物性と材料構造との依存性を調べるのに有効です。また、数値法は特定の材料構造での熱伝導について、材料の異方性や温度依存性を考慮して、厳密に計算するのに有効です。材料熱物性データベースは、NIMS物質・材料データベースや文献等から各種材料の熱物性データを抽出することによって、複合材料の熱物性計算を行うために必要な材料特性を格納しているデータベースです。
 本システムは、平成17年4月にインターネット上で公開する予定で開発を進めています。このシステムは、熱物性を必要とする複合材料の設計で有力な支援ツールになることが期待されます。

図 複合材料熱物性予測Webシステムの構造.


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