ものづくり特集号発刊にあたって

理 事

加茂 睦和


 人類はこれまでに多くの「もの」を作ってきました。「もの」を作ることによって文明を発展させてきたと言っても過言ではありません。物質・材料研究においても「もの」を作ることは大変重要です。物質・材料は「もの」そのものであり、「ものづくり」なくして、物質・材料研究の発展はあり得ません。
 また、近年、いろいろなところで「ものづくり」が見直されています。ものづくり基盤技術振興基本法が制定され、国として「ものづくり」に関する技術の向上、発展を推進しています。公的研究機関、地方公共団体等でも「ものづくり」の重要性が改めて認識されており、大学、高校などにおいては「ものづくり」に関する教育が行われているところもあります。
  「ものづくり」は製造業だけに関わるものではなく、研究の現場でも多くの「ものづくり」があります。NIMSでも「ものづくり」には積極的に取り組んでおり、新物質、新材料、新機器、新プロセス、ソフトウエア、データベースなど多様な「もの」を研究成果として創出しています。これらの成果については、「使われてこそ材料」という精神のもと、産業界と連携して共同研究を行うなど、実用化に対する努力も行っています。また、「ものづくり」に関する研究の意識を高め、より一層促進させるため、研究者業績評価の要素の1つに「ものづくり」を取り入れ、「ものづくり」の活動を奨励しています。
 今回、特集「ものづくり最前線」を企画し、「ものづくり」という視点からNIMSの研究成果をご紹介することに致しました。NIMSの多様な「ものづくり」について理解を深めて頂く機会にして頂ければ幸いです。

図1 気相成長ダイヤモンド薄膜の電子顕微鏡写真.
表面に三角形に成長した特徴的な結晶粒が見られるが、これは、{111}方向に成長したダイヤモンドである. 良好な超伝導状態を得るためには、{111}方向に成長することが望ましい.
図2 PET樹脂フィルム上に無加熱で作製した光触媒二酸化チタン薄膜、曲げても全く支障はなく、摩擦によっても極めて剥離しにくい.
図3 TMS-138合金製高圧タービン単結晶動翼を用いた最先端ジェットエンジン実機試験の様子.
ガスタービン燃焼ガス温度:1650℃世界最高).

図4 図上段はNIMSで開発した酸窒化物蛍光体.蛍光体粉末を丸い試料ケースに充填して、365nmの紫外線を照射して撮影したもの.中央のNIMSも黄色蛍光体である. 上左(紫色)および上中央(青色)は酸窒化物にCe3+添加、上右および下左(緑色)は酸窒化物にEu2+添加、下中央(黄色)はα−サイアロンにEu2+添加した蛍光体.下右(赤色)は今回発表のCaAlSiN3にEu2+を添加した蛍光体.
図中、下段はNIMSで開発した蛍光体粉末.

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