エコマテリアル研究

環境浄化材料への取り組み
− 多孔質材料と光触媒材料の創製 −

エコマテリアル研究センター
環境浄化材料グループ
山田 裕久

 

エコマテリアル研究センター
環境浄化材料グループ
葉 金花



 人類は、20世紀において資源やエネルギーを大量に消費し、汚染物質を排出しながら発展を遂げてきました。その結果、自然の自浄能力、再生能力を上回って環境に負荷を与え、地球環境の急激な劣化を招きました。人類社会が健全に存続することができる可能性を高め、21世紀を「環境の世紀」と呼べるような形で未来世代に引き継ぐためにも、大気環境・土壌環境・水環境の浄化、保全は必要不可欠です。
 環境浄化材料グループでは、高化学反応活性・選択性新規ナノ複合構造材料および新規高効率可視光応答型光触媒材料に注目し、高機能な次世代環境浄化材料の創製を目指しています。
 ナノ複合構造材料としては、特定の化学物質に反応するサイズの空き間をもつ多孔質材料(図1)に注目しています。ミクロ・メソ・マクロにわたる空き間および構造の制御、表面特性の設計、結晶形態の制御・反応基の選定等を行い、有害汚染物質を選択的に吸着・除去する材料の創製を目指しています。ゼオライトに代表されるナノポア系材料は、重金属イオンの選択的吸着剤としての機能が期待されています。また 1990 年代はじめに開発されたメソポア系材料(表紙写真下)は、その特異な構造により有機金属錯体、有機物吸着・除去等に大きな期待が寄せられています。しかし、いまだ十分な機能・化学的安定性等は見出されておらず、新規多孔質材料の創製が望まれています。
 一方、半導体光触媒材料は、その強い酸化、還元力で有害物質を分解して無害化したり、水を分解して水素を発生することが可能なため、環境浄化及び低コスト太陽光エネルギー変換材料として期待されています。しかし、従来の TiO2 などの光触媒は紫外光領域でしか作動せず、変換効率が大変低いため、可視光応答型光触媒材料の研究開発が急務となっています。このような状況のもとで、産総研との共同研究により、世界で初めて可視光照射下で水を水素と酸素に全分解する光触媒 Niドープ InTaO4の開発に成功しました(Nature、414巻、2001)。さらに、最近バンド構造を制御することによって、より広い可視光領域に応答性を有する新光触媒 InVO4(図2赤線)及び(In2O3)m (BaO)nを開発しました。
 現在、これら新光触媒の環境浄化材料としての実用化を目指すために、「産官学連携イノベーション創出事業費補助金(独創的革新技術開発研究)」により、企業などと実用化に向けた研究に着手しています。


図1 ナノポア(A)、メソポア(B)系材料の模式図

図2 新規光触媒InMO4(M=Ta,Nb,V)の活性




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