超高圧と物質・材料
微粒耐熱性ダイヤモンド焼結体の合成
- ナノダイヤモンド焼結体を目指して -

物質研究所
超高圧グループ
赤石 實



 ダイヤモンド焼結体は、ダイヤモンド単結晶の脆さや大きさの制限を解決するため、ダイヤモンド合成触媒金属を焼結助剤に用いて、ダイヤモンド粉末から高圧合成されています。これらの焼結体は、たいへん優れた高硬度材料として、各種産業分野で使用されています。しかしながら、金属を焼結助剤に用いているため、真空中、900℃の高温条件下では、ダイヤモンドの黒鉛化やクラックの導入などの劣化が起ります。
 我々は従来よりも高い圧力発生可能な超高圧合成装置を開発し、アルカリ土類金属の炭酸塩を焼結助剤とする耐熱性ダイヤモンド焼結体を約10年前に開発しました。これらの成果は、昨年度日本の企業に技術移転されました。この耐熱性焼結体は、焼結助剤の溶融炭酸塩の粘性が高いため、粒子径が5μm以上に限定されていました。
 超精密加工工具など様々な分野への応用が期待される微粒耐熱性ダイヤモンド焼結体の合成を目的に、超臨界状態のC-O-H流体(CO2とH2Oからなる)添加炭酸マグネシウムを焼結助剤に用いて、微粒ダイヤモンド焼結体の合成を試みました。その結果、粒子径数μmの焼結体から数百nm(図)の焼結体まで再現性良く合成できるようになりました。これらの焼結体の耐熱性を調べるために、真空中、900〜1,300℃の高温条件で処理しました。その結果、黒鉛化もクラックの導入も全く認められず、耐熱性がたいへん優れていることが明らかとなりました。
 さらに、微細な粒子からなるナノダイヤモンド焼結体の合成を試みた結果、出発ダイヤモンド粉末の二次粒子の形成を抑制することにより、粒子径100nm以下のダイヤモンド焼結体の合成も可能となりました。
 微粒耐熱性ダイヤモンド焼結体は、従来困難とされていた精密加工用切削工具に使用可能であるばかりでなく、地球環境保全の立場から切削油無しの機械加工用工具へ応用が期待されます。
(本研究は戦略的基礎研究推進事業による成果の一部として位置づけられます。)


図 微粒ダイヤモンド焼結体破面の組織



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