行事報告
サイエンスキャンプ2001

材料研究所
材料創製研究グループ
宗木 政一


 全国の高校生を対象としたサイエンスキャンプが今年も7月31日から8月2日まで開催されました。今年は、独立行政法人物質・材料研究機構の発足に伴い、これまで無機材研・金材技研の両研究所が独自に行ってきた内容をミックスして3日間で消化できるように企画し、15名募集することにしました。応募者は第一希望者16名、第二希望者13名の29名で、その中から次の15名を選考しました。岩手県の三浦君、山形県の臼居君、茨城県の井上君、早川君、宗木さん、埼玉県の桑原さん、東京都の浅野君、小林君、林君、神奈川県の五島君、広中君、千葉県の江越君、高田君、平井君、そして沖縄県の山城君。今年の参加者も昨年と同様に非常に意識の高い生徒が多く、積極的に研究者に質問を浴びせていました。
 初日は、まず並木地区共同研究棟4階大会議室で新谷広報委員長から歓迎の挨拶が行われ、引き続き自己紹介を行い、旧無機材質研究所の紹介ビデオで少しテンションを高め、宗木実行委員長からメニューのアウトラインの紹介が行われました。
 初日のセラミックスに関する実験は、ダイヤモンドの作製に取り組んだ8名のダイヤモンド班と、光るガラスの作製に取り組んだ7名のガラス班に分けて行われました。ダイヤモンド班では、実験前にまず炭もダイヤモンドも成分が炭素なのにどうして性質が異なるのかを学び、ダイヤモンドの合成方法である高圧法の原理と合成法についてレクチャーを受け、高圧をかけてできあがったダイヤモンドをSEM(走査型電子顕微鏡)で観察しました。一方、ガラス班では、テルルガラスの作製に向けて各自計算して求めた微量の第三元素を含めた三種類の粉末を化学天秤で秤量し、乳鉢で十分混合してるつぼに移し、800℃で溶解して各々カラフルなガラスを作製しました。赤外線や紫外線に透かして誰の作ったガラスが光るのかを観察し、最後にできあがったガラスを割って班の7人で分け合い標本を作製しました。
 2日目は、千現地区第一会議室で構造材料についてのレクチャーを受け、旧金属材料技術研究所の紹介ビデオで少しテンションを上げておき、午前中の実験では、前日のダイヤモンド班は室温引張試験に、そしてガラス班はシャルピー衝撃試験にとりかかりました。いずれもステンレス鋼二種類の材料判定を目的としたものです。引張試験班は、引張試験片の試験前の平行部と直径を測長機で測定し、引張試験機で破断試験を行いチャートから引張強さ、破断試験片の突き合わせから破断伸びと絞りを求め、精密カッターでSEM観察試料の切断までを行いました。シャルピー試験班は、まず室温でシャルピー衝撃試験のやり方に慣れてから、氷水、−50℃近傍と液体窒素温度のそれぞれの温度における二合金の衝撃吸収エネルギーを求めました。各破断試験片を実体顕微鏡で観察撮影し、代表的な破面を選び、精密カッターでSEM観察用に切断しました。午後は引張試験班とシャルピー試験班がチェンジして引き続き材料試験を行った後、SEMの装置説明を受け、各自実際に装置を操作して破面観察と撮影を行いました。実習終了後には生徒同士とスタッフの親睦を深めるため、組織制御実験棟で、れんがに型を彫って純スズを流し込みメダルを作るピュータークラフトに挑戦してもらいました。生徒達は、プログラム実習とは違い、和やかな雰囲気で思い思いのメダル作りに挑戦していました。ホテルの迎えのバスが到着する5分前にようやく全員のメダルが完成し、無事2日目が終了しました。
 最終日は、2日目までに行った実験データを五台のパソコンを使ってチームごとにまとめ、レポートの作成と発表の準備に取りかかりました。材料試験の結果を持って図書室に行きハンドブックや便覧を駆使して二種類の合金を判定しました。午後からは一人ずつ実験と感想を2〜3分で発表してもらいました。発表内容は、初日のダイヤ作製有り、光るガラス作製有り、そして2日目の材料試験結果からの合金の判定有りと生徒達がバラエティーに富んだ発表を行いました。発表の途中で岸理事長から挨拶があり、続いて修了証書が一人ずつ授与されました。14:30無事すべてのメニュー終了となりました。生徒達は別れを惜しみつつも充実感いっぱいで機構を後にしました。
 今回参加した生徒達にとって、3日間の体験実習や講師の先生との意見交換を通じ、少しでも科学技術に興味を持ち、将来の進路選択の一助となればと思います。また、ご協力いただいたスタッフの方にとっても、日頃自分たちの研究に追われる毎日ですが、若い芽を育てるという機会に恵まれたことで充実感を味わってもらえたことと思います。





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