2K以下まで冷却できる小型冷凍機を開発

材料研究所
強磁場研究グループ
佐藤 明男


 最近、たんぱく質の構造解析などのための高磁場 NMR への需要が高まってきています。例えば 800 MHz級のNMRでは、18.8 Tという高い磁場が必要となります。このような高磁場を発生させるためには超流動ヘリウム冷却によって超伝導特性を最大限まで高める必要があります。超流動ヘリウムは、熱を有効に伝えるなど冷媒として優れた性質をもっていますが、反面とり扱いが繁雑で、超流動ヘリウムを断熱して収納するクライオスタットも構造が複雑となります。そこで超流動温度を簡便に実現するために2K以下まで冷却できる小型冷凍機を開発しました。
 冷凍機は、小型 4K 冷凍機として普及しているギフォード-マクマフォン(GM)冷凍機と
ジュール-トムソン膨張(JT)回路をベースにしています。JT系の低圧ラインに真空ポンプを組み入れ、JT系の低圧圧力を 3 kPa以下まで下げることで 2 K 以下への冷却を可能にしました。JT回路を構成する熱交換器の低圧側は、圧力損失が3 kPaよりも十分に小さくないといけません。さもなければ2 K以下の温度を達成できません。しかも冷凍能力を上げるためには熱交換性能も高める必要があります。低圧力損失と高効率という相反する要求を満たすために、銅球充填型の熱交換器を開発しました。この熱交換器は、高圧流路となる銅管を巻いたものの内側に銅球を充填して低圧流路としています。銅球同士あるいは銅球と銅管を接合することで伝熱面積を拡大し、熱交換効率を高めました。
 開発した2K冷凍機は、冷凍能力が1.8 K で0.6 W、2.0 Kで2 Wと超伝導マグネットの冷却に十分な能力を有しています。また JT系の高圧圧力の最適化などによる効率向上が図られ、全入力が8.8 kWに抑えられています。
 この2K冷凍機が開発されたことで、液体ヘリウム不要の冷凍機冷却式の高磁場超伝導マグネットを構成することも可能となりました。
18 T以上の高磁場用超伝導マグネットの冷却に限らず、より低い磁場の超伝導マグネットの冷却への応用も期待されます。例えば2 Kに冷却することで安価な NbTi線材だけでも10T以上の超伝導マグネットをつくることができます。あるいは 15 T以上の超伝導マグネットでも高価な Nb3Sn線材の量を減らせます。冷凍機と合わせたマグネットシステムとしてのコストを引き下げることも可能となりました。
 この成果は、7月16日より米国・ウィスコンシン州で開催されたCEC/ICMC2001で発表されました。

図1 銅球を詰めた熱交換器の試作品

図2 開発した 2K 小型冷凍機





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