電界を利用して粒子を3次元的に
配列させる方法の開発


材料研究所
インテリジェント材料研究グループ
長谷 正司


 我々のグループでは、100nmから数100 μm程度の直径を持つ粒子の様々な配列方法の開発を行っています。今回はその1つである「粒子を3次元的に配列させる方法」について紹介します。図1に配列方法の概念図を示します。最初に1対の平行平板電極を用意します。なお、下部電極の表面には金属製の微小突起を事前に配置しておきます。そして、粒子を分散させた液状高分子を電極間に流し込んで、数kV/mm程度の交流電界を加えます。液中の粒子には、(1)電界強度が大きい位置に集まる(今の場合は微小突起の先端付近)、(2)電界に平行に並ぶ(並んだものを粒子鎖と呼びます)という性質があります。従って、粒子数濃度を調節することで、粒子鎖を微小突起上にのみ、電界に平行に(電極に垂直に)配列させることが可能となります。つまり、1次元の粒子鎖を2次元に配列させるので、粒子の3次元的配列が可能となるわけです。そして、微小突起の位置を決めることで、様々な配列体を作ることができます。配列後は液状高分子を熱硬化させることで配列体を固定します。図2に作製例を示します。直径30μmのガラス球の粒子鎖を2次元正方格子の格子点(格子点の間の距離は250μm)に垂直に並べた配列体の断面の光学顕微鏡写真です。
 本方法では、粒子と液状高分子の誘電率に差があればいいので、粒子の材質には特に制限はありません。位置制御は行っていませんが、SiO2やBaTiO3などの絶縁体、グラファイトなどの半導体、Alなどの金属で粒子鎖形成が確認されています。また、配列可能な粒子の大きさは、配列させるための電気力(誘電泳動力と言い粒子の体積に比例する)が、粒子のブラウン運動より勝ればいいので、直径が100 nm以上であれば粒子鎖が形成されると考えられています。
 現在、本方法を用いて作られる有用な材料として、金属粒子を配列させて作る制御機構が不要な微小温度調節器や、Pb(Zr,Ti)O3などのセラミックスを配列させて作るハイドロフォン(水中で音を検知するセンサー)などが考えられています。



図2 ガラス球の配列体の光学顕微鏡写真

図1 粒子の3次元配列法の概念図

 





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