第2回超耐熱材料国際シンポジウム
“High Temperature Materials 2001”


材料研究所
耐熱材料研究グループ
原田 広史


新世紀耐熱材料プロジェクト(第T期:1999-2003年度)は、独立行政法人にふさわしい柔軟なプロジェクト運営のもと、明確な目標を持って新耐熱材料を開発して熱効率65%の超高効率複合発電ガスタービンや次世代ジェットエンジンなどの実現を可能にし、CO2削減による地球温暖化防止やエネルギー資源の有効利用に貢献することを目的としています。
 プロジェクトの第3年目を迎えて、去る5月31日から6月2日にかけて、当機構第一会議室において、中間評価を兼ねた第2回超耐熱材料国際シンポジウムを開催しました。2000年3月の第1回シンポジウムと同様、参加者からの率直な意見や批評、質疑応答の状況、招待講演内容などを参考にしつつ、評価委員に評価していただくという方法を採りました。発表と討論はすべて英語とし、発表論文は正規の査読プロセスを経て後日学術誌Materials Science and Engineering Aに掲載することとしました。
 シンポジウムには、外部より101名(うち海外より12名)、当機構内部からは54名、合計155名の多数の参加を得て盛会となりました。当日はまl澤藤理事の開会の言葉に続き、米国GE社からの招待講演、筆者によるプロジェクトの成果の概要報告の後、2日間にかけて順次八つのセッションで合計31件の講演が行われました(写真1)。
 プロジェクトメンバーからは、まず材料設計に関して、Ni基超合金のミクロ組織と変形の原子レベルでの取扱いや熱力学平衡計算など、組織解析に関しては、Ni基超合金の高温でのミクロ組織解析とその結果を用いたクリープ変形メカニズム解明などについて、基礎的な研究発表が行われました。
 耐用温度1100℃を目標とするNi基超合金については、耐用温度1080℃の第4世代単結晶超合金の開発、第2世代および第3世代開発合金の15MW中型発電ガスタービンによる実証試験状況、さらには開発合金による全長30cmの大型単結晶模擬タービン翼への鋳造試験結果など、高効率複合発電ガスタービン動翼への実用化研究の進展が報告されました(写真2)。
 1800℃を目指す高融点超合金については、Ir(イリジウム)をベースにした独自の新合金のミクロ構造制御と固溶強化などによって耐用温度が1700℃に近づきつつあり、延性やコストパフォーマンスの向上も含めて研究が進捗している様子が示されました。1500℃を目指すセラミックスでは、窒化ケイ素系材料へのLu(ルテチウム)添加と結晶粒界構造制御によって優れた強度が得られつつあり、今後クリープ試験により耐用温度を評価する旨報告がありました。
 また、開発中の仮想タービン(コンピュータ中のガスタービン)に関しては、開発材料をタービン翼に使用した場合の熱効率推定などについて報告があり、ガス温度を大幅に上昇させた場合の効果を含め活発なディスカッションが行われました。
 一方、海外や国内の招待講演者や研究協力機関などからも、Ni基超合金の凝固解析、鍛造シミュレーション、低温域のクリープ変形、耐酸化性とコーティング、補修・再生、高融点のNb(ニオブ)合金、Pt(白金)合金の開発、セラミックガスタービンの開発など多彩な研究成果が報告され、プロジェクトメンバーや一般参加者との間で有意義な質疑応答が行われました。最後に、佐藤材料研究所長より次回2003年秋の第3回シンポジウムでの再会を期す旨の言葉でテクニカルセッションを閉じました。今回のシンポジウムは、研究評価だけでなく、国内および海外との連携強化の面でも大変実りあるものとなりました。
 第三日目はエクスカーションにあてました。海外からの招待講演者を主な対象に、真壁に800年つづく梵鐘鋳造所の見学(写真3)とケーブルカーによる筑波山登山を行い好評を博しました。
 当日の研究評価の結果として、(1)独立行政法人にふさわしい研究体制のもと開発目標に向けて着実に成果が得られつつあり、(2)システム研究とのいっそう緊密な連携により開発材料の実用化への発展を期待する、などの評価とご提言を頂いております。その詳細は物材機構ホームページに掲載されることになっています。お忙しい中研究評価にご参加いただいた超高温材料研究センター田中良平技術顧問(東工大名誉教授)はじめ評価委員各位にこの場をお借りして謝意を表します。また企画室始めシンポジウム開催にご協力いただいた関係各位に御礼申し上げます。
 最後になりましたが今回のシンポジウムは、金属材料技術研究所当時、長年にわたり耐熱合金の設計開発研究と後進の指導にあたられました山崎道夫帝京科学大学教授に捧げられたものであり、ここに改めて謝意を表します。


写真1 155名の参加を頂いたシンポジウムの様子



写真3 エクスカーションでの梵鐘鋳造所見学
第37代当主小田部庄右衛門氏(写真右)のご好意による
写真2 15MWガスタービン動翼(写真左:現在実機試験中)と200MW超級の大型模擬タービン動翼.いずれも開発Ni基単結晶超合金を用いて企業で単結晶鋳造したもの



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