世界最高のタンパク質構造解析用
NMRマグネット−920MHzでの運転に成功−


材料研究所
強磁場研究グループ
木吉 司


 材料研究所強磁場研究グループでは(株)神戸製鋼所と共同で超伝導NMRマグネットを開発中ですが、このほどプロトンの共鳴周波数920MHzにおける永久電流モード運転に成功いたしました。このときの発生磁場21.6TはNMRマグネットとしては世界最高の値です。当機構で開発されたTi添加Nb3Sn線材に対して、より強磁場で使える改良と、より強い電磁力で使える改良を施し、これら線材の性能をより引き出せるように1.6Kという低温でマグネットを運転できる技術を開発したことがこのたびの成果につながりました。NMRマグネットは非常に安定した磁場の発生が要求されますが、これまでの測定で100年後に予想される磁場の減少が0.3%以下と非常に優れていることが確認されました。
 核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance)を計測するNMRスペクトロメータは、ポストゲノム研究の最重要プロジェクトであるタンパク質の立体構造解明およびこれを利用した新薬の創製の分野で不可欠の装置と考えられています。その中核であるマグネットの発生磁場が増加するほど、装置の感度と分解能が向上するため、各国で強磁場NMRマグネットの開発が進められています。本マグネットは、今年度Bi系高温超伝導コイルを組み込んでより強い磁場の発生に挑戦した後、理化学研究所が推進するタンパク質の立体構造解明研究に2002年度より活用される予定です。

図1 NMRマグネット断面模式図
機構で開発した、強い磁場中でも大電流を流すことのできるNb3Sn線材(A)と、大きな電磁力でも性能を発揮するためにTaで補強したNb3Sn線材(B)を使用し、加圧超流動ヘリウムで冷却されます
図2 NMRマグネット開発の推移
高分解能NMRマグネットは永久電流モードで運転されるため、通常の強磁場発生用マグネットより遙かに磁場の発生が困難ですが、ほぼ匹敵する状況となりました. これ以上強い磁場の発生にはBi系高温超伝導材料など新しい超伝導線材の実用化が不可欠です





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