ダイヤモンドpn接合による
紫外発光ダイオードを実現


物質研究所
スーパーダイヤグループ
小泉 聡


ブリリアントカットをほどこしたダイヤモンドは固有の高い屈折率との相乗効果で“ファイヤー”と呼ばれる鋭い輝きを見せます。もうずいぶん前から、光とダイヤモンドは人間の作り上げた文明の中で良き友であったかもしれません。ダイヤモンドを工業的に利用するための研究においても、光との関係は重要です。それは、ダイヤモンドが5.5電子ボルトという大きなバンドギャップ(内在するエネルギーのようなもの)をもつことにより、半導体デバイスとして利用した場合、非常にエネルギーの高い紫外線を発生することが可能であると考えられるからです。この紫外線は現在利用されているどの半導体発光素子よりも高いエネルギーです。しかし、ダイヤモンドの半導体化と結晶を発光素子に使えるまでのグレードに良質化することが非常に難しく、実現は遠い夢の話のように言われてきました。私たちの研究グループでは、まさにこの点に関してこの数年間重点的に研究を行い、半導体ダイヤモンドの合成と結晶の高品質化に成功しました。その結果、pn接合という半導体技術の中で最も基礎的で且つ重要な構造をダイヤモンドでは世界で初めてつくることに成功しました。そして、pn接合の特徴である整流性(電気の流れを一方向に制御すること)と紫外線の発光を観測できたのです。それでは、ダイヤモンドのpn接合の作製法と発光特性について簡単に説明します。
 合成法はマイクロ波という高周波を用いたプラズマCVD法です。この方法はガスからダイヤモンドをつくる方法です。ダイヤモンドの単結晶を下地(土台のようなもの)にしてp型、n型の半導体ダイヤモンド薄膜(それぞれ、ホウ素およびリンを不純物としてドープする)をエピタキシャル成長させpn積層膜をつくります。それぞれの薄膜の厚さは
1 mm前後です。pn積層膜試料に電極を形成してpn接合ダイオードができあがります。左下の図に発光ダイオードとして動作したときの発光の様子とスペクトルを示します。表面の電極の周りから内部の発光が見えてきます。可視光領域にもバンドAという結晶欠陥による発光があるのでその青っぽい光が写真には写っています。紫外線発光は、スペクトルの左端に鋭く見えるピークで、これは自由励起子発光というものです。波長は235 nm、エネルギーは5.27電子ボルトです。今の段階ではバンドAなど他の発光の方が強いですが、もっと結晶をきれいにすることで紫外線のみが発光するダイヤモンドLEDが得られると考えています。これがさらにレーザーとして完成すれば高密度情報記録などに利用可能になると期待されます。

図 ダイヤモンドpn接合LEDの発光スペクトル






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