発足式での理事長あいさつ

岸 輝雄 理事長


 4月1日をもって独立行政法人物質・材料研究機構が、非常勤の方も含めて約1,000人の研究機関として発足しました。
 機構発足に当たっては、3つのキーワードが重要と考えます。
 第1は、「独立行政法人化」です。独立行政法人は、誰も経験のない新制度であり、我々がこれから作り上げていくものです。その際、裁量権が増えた一方で、自己責任も大きくなったことを忘れてはなりません。身分が公務員なので変化はない、という考えは間違いです。最も重要なのは、所管官庁を含めた我々の意識です。
 第2は、「文部科学省」の発足です。今後、いろいろな面で大学と比較されるでしょうが、我々はプロの研究集団であり、大学にない特徴を出して、集中的にミッションを追究していく必要があります。一方で、文部科学省所管の機関として大学と連携を深めることも重要です。
 第3は、「両研究所の統合」です。これまで異なっていた運営方針をいきなり統一することはしませんが、各研究所の使命は一段落したと考え、新たなスタートを切るという意識が必要です。

 独立行政法人の特徴として理事・監事の存在があります。研究機関の場合は、野球で言えば理事はフロントです。所長は監督、研究者は選手に当たります。理事は環境を整えるのが仕事であり、名をなすのは選手で、研究現場のことは監督にお任せします。

 中期目標/中期計画では、ナノ材料、環境材料、安全材料が3本柱です。他に研究基盤・知的基盤、萌芽的研究、技術移転、設備共用も重要項目です。産官学・国際協力も重要なキーワードです。加えて、計算材料科学による理論づくりに期待しています。また、金属とセラミックが共存する複合材料、両者が競争する生体材料などにも、統合のメリットを生かしたいと考えています。高分子の専門家はあまりいませんが、共存・競争の部分に少しずつ入れたいと思います。中期計画に沿った評価も忘れてはなりません。
 この1年はナノに全力投球し、その体制を作り上げる予定ですが、将来を見越していくつかの研究所、センターの立ち上げを考えていかなければなりません。

 材料開発の今後の方向は、「スマート」と「システム」が重要なキーワードと考えています。
 スマートとは、多機能を意味します。ほとんどの材料は、単機能では不十分で、例えば構造材料では、強度と靭性が必要となります。材料のシステム化は、物質・材料とデバイス・構造物の距離が短くなった現状で利用を考えるという意味で、研究所が目指す一つのキャッチフレーズであり、その技術手法の一つが、ナノテクノロジーです。セラミクス、金属、高分子の融合も、大いに導入したいものです。

 私としては、研究第一主義で、個人の顔が見える、また、業績者を優遇するシステムを作りたいと思います。全体のレベル向上と共に、研究所にはピークが必要で、これを皆で押し上げ、世界に冠たるピークを作ることを目指します。優れた部分を拡大することも、国のミッション遂行に加え、研究所の発展に欠かせません。合わせて、グループ評価と共に、この時代、個人評価も避けて通れません。
 また、日本は研究支援体制が貧弱です、ドイツのマイスター制度に相当するシステムを、機構で実現したいと思います。事務の合理化、簡素化も重要で、書類を一桁減らすことにチャレンジしたいものです。
 
 最後にお願いします。研究には、アイデア、インスピレーション、コンセプトそしてエフォートが重要です。研究者の方は、好きでこの途に入られたはずです。その情熱を持ち続け、研究生活をエンジョイしながら、共に世界に冠たる機構を作り上げていきましょう。

※本稿は、4月2日に行われた当機構の発足式での、職員に対する理事長あいさつを要約したものです。





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