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圧延といえば,2本のロールが鋼板を挟んで引き伸ばすのが最もスタンダードな大量生産型手法といえる.
しかし,原理は変わらなくても明らかにアイデアに富んだ様々な圧延技術(今はまだ少量生産型だが...)が世の中にはある.

小生はかつて様々な圧延方法を調べたことがあるが,必ず最終的にはドイツ(時折,ソ連)に行き着いた.今回の訪問で,その根源を見ることができた.
特に,アーヘン工科大学のIBFには土壌があり,そこにシミュレーションという近代技術を上手く融合させている.IBFでは失敗した試験片を捨てることなく,保存している.イビツな形のサンプルを見たときに,恵まれた環境だということを感じずには居られなかった.また,彼らは,圧延は板成形,鍛造は部品成形という考えに固定されていない.圧延で部品を作るアイデアや自由鍛造で型鍛造用の部品を作るアイデアを実行している.
アイデアを実行する土壌があることに羨ましさを感じた.

全ての研究機関で共通していることは,研究費確保と人材である(これは日本も同じだと思うが...).この問題に関しては,ドイツ云々というのではなく,ヨーロッパ全体でどうかという視点が必要となってくる.
日本ではどうか?一国で立ち向かえるほど,未来は易しくないような気がするが...。

なお,現在ヨーロッパの主要11カ国が資金をシェアーし(44000ユーロ/年間),若者に対して鉄鋼全般に目を向けてもらう目的で,様々な宣伝活動をしていると伺った.鉄に携わる人間が居なければ,その国で培われた技術の伝承は途絶える.
「伝承なくして未来なし」.他国で伝承されればいいのでは?という考えにもなるが,文化だけでなく,技術もその国民性だからこそ,発展するはずである.

そう考えると,日本には他国に負けない技術と国民性があるはずである.

昨年,ある大学の教授が講義の中で「今のあなた達は日本で培われた鉄の技術を食いつぶしている.今の日本にある鉄製造ラインはあなた達のお父さんの代が汗を流して,外国の技術に改良を加え,世界No.1の製品を供給するまでになった.あなた達は次に何をした?何をする?時代にあった技術の改良が求められている.今以上に良い製品を作れとは言わない.多少品質が落ちても,それを超える何かがあれば認めてもらえる.是非,考えてくれ!スネもそうだが,技術もいつまでも食えると思うな」と発言した.会社で仕事をし,現在大学に居るその教授にとって,今の鉄鋼の現状がそう写っているのだろう(重みがある発言である).小生のような人間が,その教授と同年代になったとき,そんなセリフを言えることができるのか?あるいは言える相手が日本人でなかったら...



余談〜 

デュッセルドルフのビールは美味い。何よりも香りが素晴らしい。なぜ“ドイツのビール”でないのか?ドイツでは、その土地で造られたものはそこでしか飲むことができません。すなわち、日本のようにつくばの飲み屋で新潟や富山などのお酒を飲むことは法律で許されていません。考えてみれば、八海山を飲みたければ新潟に行かなければならなくなると、新潟にお金が落ちる。観光もすればもっと落ちる。
物の流通ではなく、人の流動を促進させることが必要ではないか?

地方の活性化にはこの方法が得策か...

今回はこの辺で失礼・・。
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