炭酸塩を焼結助剤とするダイヤモンド焼結体は耐熱性に優れている。溶融炭酸塩の粘性が高いため、合成可能な粒子径は中粒径に限定されていた。 炭酸塩−超臨界C-O-H流体を焼結助剤に用い、微粒ダイヤモンド焼結体の超高圧合成を行った結果、数百ナノメーターの粒子径からなる高硬度焼結体を合成することができた。同焼結体の耐熱性を調べた結果、真空中、1300℃の熱処理後も黒鉛化もクラック導入も全く認められなかった。
β型窒化ケイ素に衝撃圧縮を与えて高圧相転移を起こさせることにより、立方晶窒化ケイ素の大量合成に世界で初めて成功した。 衝撃圧縮後の試料は、圧力15〜65GPa、温度1200〜3000℃の範囲でスピネル型の立方晶窒化ケイ素(cubic Si3N4)に変換していることが明らかになった。電子顕微鏡による観察から、同試料は50nmまでナノ結晶化しており、組成は出発原料のままであることが確認された。さらに、加熱試験から1300℃まで安定であることがわかった。
最も単純な二原子分子であるヨウ素分子(I2)が高圧下で分子解離を起こす際、分子と原子の中間状態が現れることを発見した。 高圧実験で使う圧力伝達媒体にヘリウムを用いることで圧力の均一性を格段に向上させ、固体ヨウ素の分子解離の詳細をX線回折で調べることで、約24 〜28GPaの圧力範囲に分子と原子の中間状態が存在することを発見した。この中間状態ではヨウ素の原子間距離が分子と原子のちょうど間に分布し、非整合変調構造を組んでいることも明らかになった。
遠紫外領域(波長215nm)で単峰性の非常に強い発光スペクトルを示す高純度六方晶窒化ホウ素(hBN)結晶を、高温高圧反応で合成することに成功した。またこの物質が、半導体レーザなどに応用可能なワイドバンドギャップ半導体であることを実証した。 さらに、電子線による励起で、この発光線を利用して遠紫外領域(波長 215nm)で室温レーザ発振動作をさせることに成功した。これは、波長変換素子を使わずに固体レーザで直接到達できる波長のうち最も短い波長における発振例である。
高純度hBNの写真。紙面垂直方向がc軸、紙面平行方向に劈開面。
■六方晶珪酸塩ペロブスカイトの発見
ペロブスカイト構造珪酸塩鉱物は、地球の大半を占める下部マントルを構成する鉱物として広く研究され、代表例として、 斜方晶ペロブスカイト(MgSiO3:空間群Pbnm) 立方晶ペロブスカイト(CaSiO3:空間群Pm3m) が知られてきた。今回、珪酸塩鉱物において初めて 六方晶ペロブスカイト(SrSiO3:空間群P63/mmc) の合成と確認に成功した。レーザー加熱DACによる35GPa, 1500℃の高温高圧下で合成され、SPring-8の放射光X線を用いて構造が決定された。 なお、この構造は一気圧には凍結できずアモルファス化してしまうため高圧下でのみ構造観察が可能である。