[遷移金属炭化物、窒化物表面関連情報]

(Start, 2/5, 2002)(Update, 1/8, 2016)[Top]

計算対象:遷移金属炭化物、窒化物表面(001)面

岩塩構造(NaCl型構造)を持つ、TiC、ZrC、NbC、HfC、TaC、TiN、ZrN、NbN、HfN、TaNの各表面で、(001)面の構造最適化とその電子状態を求める計算を行なった。計算方法は、第一原理分子動力学(FPMD)手法。
(001)面は、無極性な面となっており、陽イオン(遷移金属原子)と、陰イオン(炭素または窒素原子)が、それぞれ同じ数だけ交互に配置している。実際の計算の上でも極性面〔(111)面など〕を扱うより、無極性面の方が計算が楽である。これは無極性面上では電場勾配が生じないためである(通常のバンド計算では周期的境界条件のため、電場を扱うのが大変難しい)。
表面は、スラブ近似によって周期的境界条件の下で扱う。バンド計算手法を使って仕事関数を求める方法については、用語集の”仕事関数の計算”を参照。

筆者(小林)の研究

(ランプリング [rumpling])
この岩塩構造物質の(001)表面は無極性面となっていて、ランプリングという構造変位を起こす。おおまかに言えば、表面緩和の過程で陽イオンより陰イオンの方が大きい分、バルク側への変位が陽イオンより小さくなる。従って、陽イオンはバルク側、陰イオンは(相対的或いは絶対的に)真空側へ変位することとなる(必ずしもそうならない場合もある)。

遷移金属炭化物[1]、窒化物[2]において、筆者が計算した系では全て炭素、窒素原子(陰イオンに相当)が真空側、遷移金属原子(陽イオンに相当)がバルク側に変位した。電子状態はバルク、表面(理想表面構造、最適化構造共に)とも金属的であった。
構造最適化以外に仕事関数を理論計算の結果から求めた。計算の結果、遷移金属炭化物表面より窒化物表面の方が、仕事関数の値が小さくなることが分かっている[2]。その理由に関しては、参考文献[2]において説明されているが、非常に手短に言えば炭素と窒素の価電子数の差によるものと考えられる。更に、遷移金属窒化物表面では、理想表面より構造最適化した表面(←ランプリングにより窒素が真空側に変位している)の方が、仕事関数の値が小さく(低く)なる場合があることが分かった。一方、筆者が計算した炭化物表面では、全ての場合で理想表面の方が小さな値となる。計算で得られる仕事関数の精度は、文献[1][2](特に文献[2])にあるように、実験値との一致は比較的良いと言える。実験との差は大体、0.2〜0.3 eV程度であり差が最も大きいのはHfN(001)表面で、約1 eVの差がある。

(参考文献)
[1] K. Kobayashi, "First-principles study of the surface electronic structures of transition metal carbides", Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 39, No. 7B, (2000) 4311.
[2] K. Kobayashi, "First-Principles Study of the Electronic Properties of Transition Metal Nitride Surfaces", Surface Science 493 (2001) 665 [DOI: 10.1016/S0039-6028(01)01280-8](*).
[3] K. Kobayashi, "First-principles study of the TiX(X = B, C, O, N and F) surfaces", in proceedings of JK2000, (2001) 285. [PDF](PDF形式、174 kb)
[4]K. Kobayashi, N. Kobayashi, and K. Hirose, "First-Principles Study of TiN/MgO Interfaces", e-J. Surf. Sci. Nanotech., 12 (2014) 230 - 237 (ACSIN-12 & ICSPM21) [DOI: 10.1380/ejssnt.2014.230].←MgO(岩塩構造)の[バンド構造](png, 25.6 kb)
[5]K. Kobayashi, H. Takaki, N. Kobayashi, and K. Hirose, "Electronic Band Structure of Various TiN/MgO Superlattices", JPS Conf. Proc. 5 (2015) 011013 (CSW2014).
[6]Hirokazu Takaki, Kazuaki Kobayashi, Masato Shimono, Nobuhiko Kobayashi and Kenji Hirose, "First-principles calculations of thermoelectric properties of TiN/MgO superlattices - the route for enhancement of thermoelectric effects in artificial nanostructures", J. Appl. Phys. 119 (2016) 014302.

バンド計算関連+表面関連情報


関連有用リンク

(筆者の他の研究)
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