近年の半導体微細加工技術の進歩によって、人工的に作成した閉じ込めポテンシャルを用いて数ナノメートルの領域に電子を束縛した半導体量子ドット構造が作成されており、単電子デバイスとしての応用面からも大きな注目を集めています。
実験的にはクーロンブロッケイド現象を利用して量子ドット内にひとつずつ電子を閉じ込めることが可能で、その電子は閉じ込めポテンシャルと電子間相互作用に応じた殻構造を形成することが知られています。
このように実際の原子に類似した電子状態を持つため、量子ドットは人工原子とも呼ばれます。
特に球状の人工原子は、高い対称性から強く縮退した殻構造を持ち、また軌道角運動量を保存するなど実際の原子と類似した点が多いため、その電子状態に興味が持たれ、正確な把握が求められています。
私たちはこのような球状人工原子に着目し、有効質量近似を用いた電子気体のハートレー・フォック近似計算を行い、ディスク状人工原子におけるフント第一法則が球状の人工原子においても成立することを導きました。
さらに合成軌道角運動量の固有関数が持つエネルギーを検討した結果、球状人工原子ではフントの第二法則が成立していることを初めて見出しました。
また磁場を印加することで新たに出現する殻構造についても理論的に考察を行い、M. Eto および H. Tamura による一般化フント則が成立することを明らかにしました。
図 従来型のディスク状量子ドット( 左 )と球状量子ドット( 右 )
第一原理計算に基づく DNA 塩基対の開裂状態の動的過程
デオキシリボ核酸( DNA )の局所的な変形のうち、塩基対間の水素結合が局所的に解離した開裂状態は DNA 二重螺旋の熱解離による一本鎖変態の前駆現象に関係すると理解されています。
本研究ではDNA内部に存在する塩基対開裂状態の動的過程をDPBR( Dynamic Plane Base Rotator )モデルと呼ばれる理想化された二重螺旋を仮定することでその動的過程を追跡し、また伝搬機構を理論的に検討しました。
特に従来困難であった水素結合エネルギーおよびスタッキングエネルギーの定式化を第一原理計算の適用により行いました。
その結果、系の持つハミルトニアンの一般形から差分方程式を導出し、さらに連続体近似を行うことによって非線型連立偏微分方程式を得ることに成功しました。
これを用いて開裂状態の動的過程を理論的に検討し、塩基対の幾何学的構造に基づく立体障害と、伝搬に必要なスタッキング相互作用の弱さによって従来考えられていたsine-Gordonソリトンが伝搬することが困難であることが結論されました。
図 DNA二重螺旋とDPBRモデル
発表
Y. Asari, J. Nara, N. Kobayashi, T. Ohno, Transport Properties of Al Nanowires, International Conference on Solid Films and Surfaces (ICSFS-12), D3-3, Hamamatsu Congress Center (Hamamatsu), 2004/06/23
T. Koiso, M. Muraguchi, Y. Asari, K. Takeda, N. Watanabe,
Theoretical study on quantum phenomena of a single-electron wavepacket injected into the mesoscopic device having an elliptic form, MS+S2004, PMo-42,
NTT BRL( Atsugi ), 2004/03/01
Yusuke Asari, Hiroyuki Tamura, Kyozaburo Takeda,
Hund's First and Second Rules in Spherical Artificial Atoms, C33.045,
APS March meeting,
Indiana Convention Center; Indianapolis, Indiana, 2002/03/18
Masakazu Muraguchi, Takuji K. Koiso, Yusuke Asari, Kyozaburo Takeda,
Theoretical Possibility of Electron Focusing by Quantum Lens, C33.034
APS March meeting,
Indiana Convention Center; Indianapolis, Indiana, 2002/03/18
Yusuke Asari, Hiroyuki Tamura, Kyozaburo Takeda,
Hund's second rule in spherical artificial atoms, P34,
Mesoscopic Superconductivity and Spintronics
(MS+S2002),
NTT Atsugi R&D center (Atsugi), 2002/03/04
Masakazu Muraguchi, Takuji K. Koiso, Yusuke Asari, Kyozaburo Takeda,
Theoretical study on quantum phenomena of an electron wavepacket injected into various potential walls, P17,
Mesoscopic Superconductivity and Spintronics
(MS+S2002),
NTT Atsugi R&D center (Atsugi), 2002/03/04