独立行政法人 物質・材料研究機構
国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 原子エレクトロニクスユニット 原子エレクトロニクスグループ
グループリーダーの挨拶
原子の世界に魅せられて原子の並び方ひとつで、同じ炭素原子でも、ダイヤモンドにも黒鉛にもなる。私たちが研究しているのは、そんな不思議な世界です。私の研究は、高分解能電子顕微鏡を使った物質表面の原子の並びを探る卒業研究から始まりました。物質の多くは整然と並んだ原子によって構成されていますが、その表面では、物質内部とは異なる原子配列が観察されることがあります。 例えば、一見平らな金の表面も、原子スケールではノコギリ状の構造に変化していることがあります(図1)。シリコンの表面では、もっと複雑な構造を取ることが知られています(図2)。
今では広く知られているこの構造は、私が所属していた研究室の先生や先輩方が明らかにしたものですが、私も、この不思議な構造に魅了された研究者の一人です。この構造は表面だけのものです。ですから結晶成長過程においては、新たな表面が作られる度に原子の移動が起こって、最表面だけがこの構造となります。では、どのようにして?
図3は、そんな興味から始めた結晶成長過程の実時間観察結果です。百聞は一見に如かず。実際に観察してみると多くのことが分かりました。今では比較的簡単に出来るようになった「原子操作」も、当時は挑戦的な研究テーマでした。図4は、二硫化モリブデンの表面の硫黄原子をはぎ取って書いた文字です。 |
'これら2つの仕事は日立製作所中央研究所在勤中に行ったものですが、基礎研究を大切にする会社の度量の大きさに今でも感謝しています。
現在では、原子の移動を利用した新しいナノデバイス「原子スイッチ」(図5)の開発を始めとして、原子・分子スケールで起こる現象の解明とそのデバイス応用を主な研究テーマとしています。「原子を観る」、「操る」、「利用する」と研究を続けて参りました。研究成果の一部は、企業における製品化に利用されつつあります。なお、上記の研究成果は全て、独自に開発した装置を用いて得られた物です。最先端の研究を行うためには、オリジナルな装置の開発も必要となります。研究とはブラックボックスをひとつずつ減らして行くことであり、装置についても、その原理は勿論、自分で修理出来るぐらいに中身を知っていることが望まれます。
原子エレクトロニクスグループでは、独創性を大切に、社会に貢献できる研究・開発を今後も行って参ります。皆様のご理解とご支援をお願いする次第です。
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図 1 |
図 2 |
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図 3 |
図 4 |
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図 5 |
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研究概要
原子エレクトロニクスグループでは、原子・分子の移動や化学反応による原子スケールでの構造変化と、それに伴い発現する機能の研究、並びにそのデバイス応用を目指した研究を行っています。また、これらの研究を行うために必要な機器や計測手法の開発も行っています。
上記研究を推進するため、私達のグループは,下記のプロジェクトに参画しています。
- 文部科学省 産学官連携プロジェクト「原子スイッチを用いた次世代プログラマブル論理演算デバイスの開発」
(研究代表者:青野正和、期間:2005.8~2010.3) - 戦略的国際科学技術協力推進事業 日独交流研究「固体電解質原子スイッチ動作における電荷交換と移動に関する研究」
(日本側研究代表者:長谷川剛、期間:2008.10~2012.3) - 独立行政法人 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 (CREST)「3端子型原子移動不揮発性デバイス『アトムトランジスター』の開発」
(研究代表者:長谷川剛、期間:2009.10~2015.3) - 戦略的国際科学技術協力推進事業 日英研究交流「不揮発性アトムトランジスタを用いた低消費電力ロジックシステム」
(日本側研究代表者:長谷川剛、期間:2011.5~2014.3)
最近の出来事
- 長谷川剛グループリーダー(研究代表者)の「原子移動型素子を用いたニューロン動作に関する研究」が、公益財団法人 村田学術振興財団 第27回(平成23年度)「研究助成」に採択されました。
- 寺部一弥主席研究員と長谷川剛グループリーダーが、青野正和フェロー、中山知信センター長とともに、平成19年度日本表面科学会会誌賞を受賞致しました。 (対象論文: 「原子スイッチ-原子イオンの移動を利用したナノデバイス-」表面科学27(4), 232-238)
- ポスドク研究員の江本顕雄さん(H18.4~H19.5)が、H19.6.1付けで産総研のポスドク研究員に転出されました。
- 長谷川剛グループリーダーと寺部一弥主席研究員が、青野正和ナノシステム機能センター長、中山知信ナノ機能集積グループリーダーとともに、平成19年度科学技術分野の文部科学大臣表彰・科学技術賞を受賞致しました。
( 受賞業績:原子スイッチの研究)
- ポスドク研究員の高城大輔さん(H17.4~H19.3)が、H19.4.1付けで大阪大学・理学部の助教に着任されました。
- 共同研究生の田村拓郎さんが博士号を取得され、H19.4.1付けで、群馬大学ATECのポスドク研究員に着任されました。
量子化コンダクタンスの基礎 |
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量子化コンダクタンスのSEM像を示す。 |
量子化コンダクタンスの概念図を示す。 |







