NIMS-NFM

National Institute for Materials Science (NIMS)
Nano Frontier Materials Group

物質・材料研究機構
ナノフロンティア材料グループ



ダイヤモンドの超伝導
―新規ナノデバイスを目指して―

宝石の王様として知られるダイヤモンドは、美しいだけでなく、多くの興味深い性質を持っています。 例えば、最も堅い物質であること、室温での熱伝導率が最も高いこと、良質な絶縁体であることなどです。 天然のダイヤモンドは、地球内部の高温高圧の環境下で生まれます。これに対し、約20年前に、 メタンやエタノールなどのガスから、ダイヤモンドを合成する、気相成長法が開発され、なんと、 お酒からもダイヤモンドが合成できることが分かりました。この方法により、 比較的容易に質の高いダイヤモンド薄膜を作ることが出来るようになりました。

気相成長法では、ダイヤモンドにホウ素を添加することも出来ます。純粋なダイヤモンドは、 電気の流れない絶縁体ですが、わずかにホウ素を添加すると、美しい青色になり半導体になります。 このダイヤモンド半導体は、従来のシリコンと比べて、高温や高周波で安定な動作をするため、 今後の研究開発が期待されています。

さらに、1-10万倍以上も多量にホウ素を添加したところ、ダイヤモンドは黒色になり、 金属的電気伝導を示すようになります。そして、試料を低温に冷却すると、 電気抵抗がゼロになる超伝導が現れることが最近分かってきました。超伝導になる温度(超伝導転移温度)と ホウ素濃度の関係を、図1に示します。ホウ素濃度が増加すると、超伝導転移温度も上昇することが分かります。 さらに多くのホウ素を添加することが出来れば、さらに超伝導転移温度も上昇すると思われます。

ダイヤモンドの超伝導は、半導体に起こる珍しい超伝導であると考えられ、 その発現メカニズムを解明する努力がなされています。我々は、アインシュタインの発見した光電効果 (光を当てると電子が飛び出す)の原理を用いて、角度分解光電子分光測定を行いました(図2)。 その結果、ホウ素をドープしても、ダイヤモンドの電子状態は基本的に変化しないこと、 金属的伝導の起源がダイヤモンドの価電子によるものであることが分かりました。これらの結果をもとに、 我々は、半導体と超伝導の性質を複合した新しいデバイスの開発を目指します。おわりに、この研究は、 早稲田大学の川原田研究室と岡山大学の横谷研究室との共同研究です。


図1.超伝導転移温度とホウ素の濃度の関係



図2.ダイヤモンドの電子状態



戻る

Yoshihiko Takano, NIMS