イベント

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第25回NBCI-NIMS合同連携セミナー(構造材ゼミ048)

2016.12.06 15:00 ~ 2016.12.06 18:20

開催目的

本セミナーは、NBCI(ナノテクノロジービジネス推進協議会)材料分科会とNIMSが以下の目的に基づき共同企画し、隔月でつくばにて開催しています。
① NIMSは、自分たちが進める最先端研究を民間企業に紹介することにより、その最先端研究に対する民間企業のニーズを知る。
② NBCI会員企業は、NIMSが進める最先端研究が自分の仕事に如何に役立つかイメージする。
③ NIMSから紹介された研究テーマで興味深いものについては、連携の方法を含めてNIMSとNBCI会員企業との連携について考えていく。
 
受講者は原則としてNBCI会員に限られますが、定員の枠内であれば、NBCIを通して非会員の方の受講も歓迎します。受講を希望される方はNBCI事務局にお問い合わせください。
 
お問い合せ先:NBCI材料分科会事務局 
E-Mail:nbci08=nbci.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください) 

プログラム

日時

2016年12月6日(火)15:00-18:20(懇談会を含む)

場所

千現地区 先進構造材料研究棟 5Fカンファレンスルーム

プログラム

15:00-17:15
講演、材料強度実験棟(疲労試験機、事故調査のパネル)の見学、質疑
17:20-18:20
講師を囲む懇談会 
(懇談会参加費1,500円)
 
テーマ:損傷とナノテクノロジー(その2 腐食)
-疲労の基礎とギガサイクル疲労への挑戦-
 
講師: 古谷 佳之(ふるや よしゆき)
構造材料研究拠点 材料信頼性分野 疲労特性グループ 主幹研究員

プロフィール:「疲労はしばしば事故の原因となりますが、200年近くの研究にも拘わらず未だに克服することができません。これは、解決すべき課題が多すぎる、極めて複雑な現象であるためです。未解決課題の一つに、ギガサイクル疲労の問題があります。ギガサイクル疲労の研究が難しい理由は、数年を要する長期間の疲労試験が必要となる点です。このようなギガサイクルという未踏の領域に踏み入れ、そこで解決策を見出すことに挑戦しています。」

概要

疲労は、き裂発生というナノレベルの現象から、大きな構造物の破壊というマクロな現象に繋がるマルチスケール現象です。主に金属材料で問題となるため、金属疲労と呼ばれることもありますが、全ての材料に共通する課題です。日航機墜落事故やもんじゅの事故も疲労が原因です。疲労の難しい点は、弾性域の小さな力の繰返しでも生じる点です。マクロには弾性変形でも、ミクロでは局所的な塑性変形が生じて疲労き裂が発生します。ただし、通常はそれより小さい力では疲労が起こらない疲労限が存在し、疲労を防ぐためのしきい値として用いられます。ところが、高強度鋼やチタン合金では疲労限が消滅します。この場合、内部破壊という通常とは異なる破壊形態が出現します。これがギガサイクル疲労という現象です。疲労の研究は実験データに基づく経験則の塊ですが、ギガサイクル疲労の研究では科学的なメカニズム解明に基づく特性予測を目指しています。
本講では、最初に疲労の基礎として教科書的な内容の復習を行います。その後、ギガサイクル疲労に関する最新の研究成果をトピックス的にご紹介します。
トピックス1)超音波疲労試験によるギガサイクル疲労の加速試験
トピックス2)ビーチマーク法による内部破壊機構の解明と特性予測式の導出

参考文献: 
 (1) 古谷佳之:「高強度鋼のギガサイクル疲労強度予測式の提案」, 鉄と鋼, 102(7), (2016), 415-422.

開催報告

5社から7名の参加があった。参加者数は、年末ということもあり少なかったが内容の濃いゼミとなった。
講演では、導入として、疲労に関する基本的な話を歴史的経緯を含めて紹介した。まず、高サイクル疲労はマクロには弾性変形だが、ミクロで局所的な塑性変形が疲労き裂を発生させるメカニズムをわかりやすく説明した。これまで長い間、これ以下では疲労破壊が起こらない応力(=疲労限)があり、それが繰り返し数が百万回(メガ)程度までの試験で決定できるのが常識だった。しかし、近年、チタン合金や高強度鋼では、疲労限が十億回(ギガ)を越えても決定できない場合があることが明らかになってきて、その機構の解明と効率的な短時間試験法の確立が求められ、講師は超音波疲労試験法(千倍程度加速)を確立した経験を分かりやすく述べた。ついには、疲労き裂発生と疲労き裂伝播の段階論で説明され
てきた今までの疲労論に切り込み、疲労き裂発生も極めてミクロなき裂伝播によることを実験的に明らかにし、疲労寿命の科学的予測に近づいていることを示した。
材料強度実験棟の見学では、疲労試験機、日航機墜落事故(1985年)やもんじゅの事故(1995年)のパネル展示について説明した。質疑応答は、いつものように質問時には一つの質問という原則で、企業参加者全員に対しQ&Aが行われた。技術的な質問とともに今後の研究への具体的な期待、注文も寄せられた。参加者からの事後感想では、「疲労の基礎から始まり最先端の研究成果まで、広範な内容を詳細かつ分かりやすく紹介してもらい、非常に中身の濃い有益なセミナーだった」「NIMSに蓄積されているデータが世界的も貴重であり、事故調査にも役立ち、私たちのくらしの安全に役立っていることがよく分かった」などの満足度の高い声が多かった。
     講演する古谷 佳之主幹研究員
          セミナー概況
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