ナノ材料科学環境拠点(GREEN)

Global Research Center for Environment and Energy based on Nanomaterials Science

国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)

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2017年度 第7回 GREEN拠点賞決定

 GREENでは、若手研究者奨励を目的にナノ材料科学環境拠点賞(GREEN拠点賞)を平成23年度からはじめています。この度、第7回授賞者を平成29年度での研究活動を対象に決定し、第18回 GREENシンポジウム(6月29日)の機会に顕彰しました。

 慎重で厳正な選考の結果、先進賞はKhadka B.Dhruba氏(GREEN)、冨田 健太郎氏(GREEN)に、オープンラボ賞は白澤 徹郎氏(産業技術総合研究所)、長期RA賞はLin Huiwen氏(北海道大学)、短期RA賞は藤浪 太智氏(東京農工大学)、山口 和輝(鳥取大学)に決定し、授与しました。

受賞者と魚崎拠点長(中央)

受賞者と魚崎拠点長(中央)

表彰されるKhadka B.Dhruba氏(右)と魚崎拠点長(左)

表彰されるKhadka B.Dhruba氏(右)と魚崎拠点長(左)

先進賞

Khadka B.Dhruba 氏 (ペロブスカイト太陽電池特別推進T、ポスドク研究員)

Khadka B.Dhruba 氏
(ペロブスカイト太陽電池特別推進T、ポスドク研究員)
容量分光法を用いたペロブスカイト太陽電池における効率損失機構の評価

ペロブスカイト型ハロゲン化鉛を発電層にもつ太陽電池は、大気圧・低温塗布工程で簡便に作製できるにもかかわらず、従来型薄膜太陽電池トップクラスの発電効率を示す有望な素子である。受賞者は素子内部のドープ量分布やキャリア捕獲中心の密度・エネルギーなどを調べることのできる容量分光法をペロブスカイト太陽電池に適用し、作製法や劣化による発電効率の変化が容量の温度、周波数、バイアス電圧依存性に明瞭に現れることを示した。特にバルク特性が効率と相関せず、電荷輸送層・ペロブスカイト界面がもっぱら効率を決めているという、高効率化への指針となる重要な知見を得た。 このように受賞者は、先進性に相応しい研究成果を挙げており、その先進性を称え、今後の一層の発展を期待して、授賞する。

冨田 健太郎 氏 (ナノ構造制御電極触媒G、ポスドク研究員)

冨田 健太郎 氏
(ナノ構造制御電極触媒G、ポスドク研究員)
リチウム空気電池正極反応機構に関する研究

リチウム空気電池は現在の蓄電池をはるかに超える高いエネルギー密度をもった蓄電池として、将来的な実用が期待されているが、低いサイクル特性が大きな問題であり、その向上には電池内反応の理解が不可欠である。受賞者は電気化学測定に加えて、回転円板電極 、表面増強ラマン、水晶振動子マイクロバランスなどの手法を駆使し、リチウム空気電池の 正極反応について、反応機構の解明に取り組み、添加物や不純物の効果を明らかにするとともに、酸素同位体を用いた実験により正極放電生成物である過酸化リチウムの生成場所をあきらかにするなど、 リチウム空気電池正極反応機構の解明、ひいては高いサイクル特性につながる重要な研究を着々と進めている。

このように受賞者は、先進性に相応しい研究成果を挙げており、その先進性を称え、今後の一層の発展を期待して、授賞する。

オープンラボ賞

白澤 徹郎 氏 (産業技術総合研究所、主任研究員)

白澤 徹郎 氏
(産業技術総合研究所、主任研究員)
波長分散型X線CTR散乱法による電極触媒界面のリアルタイム構造観察

受賞者はJSTさきがけの研究プロジェクトにおいて、連続波長をもつ集束X線を利用することにより、X線CTR法の観察速度を従来比で約100倍に高速化し、固液界面反応中の原子の動きをつぶさに捉える技術を開発した。GREENオープンラボの枠組みでこの技術をさらに発展させ、燃料電池への応用が期待されるメタノール酸化反応中における表面原子の動きをリアルタイムで観察することに成功した。現在、より広範な材料群への展開が進められており、反応機構の解明に基づく新材料の設計・開発に大きな貢献が期待される。

このように受賞者は、オープンラボ事業に最も相応しい研究成果を挙げており、その努力と成果を称え、今後の一層の発展を期待して、授賞する。

長期RA賞

Lin Huiwen 氏 (北海道大学、博士課程3年)

Lin Huiwen 氏
(北海道大学、博士課程3年)
リチウムイオン電池における次世代Si 負極材料の微細組成・構造解析

受賞者は次世代蓄電池の負極材料として注目されていながら、多くの課題を抱えているシリコンについて、主に充電(リチウムの挿入)に伴う構造変化や組成を、走査型電子顕微鏡(SEM)をエネルギー分散形X線分析(EDS)や軟X線分光(SXS)などを組み合わせ、大気非暴露環境下で解析し、今後の特性向上につながる指針を与える成果を得た。

このように受賞者は、長期RA事業の精神を理解、実践しており、今後長期RAでの経験を糧とし、一層成長することを期待し授賞する。

短期RA賞

藤浪 太智 氏 (東京農工大学、修士1年)

藤浪 太智 氏
(東京農工大学、修士1年)
LAB負極のLiデンドライト析出へ及ぼす電解液依存の検討

受賞者は、平成29年度NIMS GREENオープンラボ制度の研究に参加し、短期RA制度を最もよく活用した学生の一人として際立った実績を残している。その研究成果の一部は、米国電気化学会(ECS)主催の232nd ECS MEETINGにおいて発表され、「ECS Battery Division Young Scientist Best Poster Award in Honor of Frank McLarnon」を受賞している。発展研究としても、平成30年度NIMS連携拠点推進制度にて引き続き研究を進める予定であり、今後の更なる活躍が期待される。

山口 和輝 氏 (鳥取大学、博士後期2年)

山口 和輝 氏
(鳥取大学、博士後期2年)
高性能リチウムイオン電池に資するシリコン負極の反応挙動に関する研究

受賞者は走査型電子顕微鏡と軟X線発光分光法を駆使してリチウムイオン電池用シリコン負極内部におけるSiとLiとの反応部位の解析を行った。通常使用される有機電解液を用いた場合ではSi活物質層の一部でしかLiが検出されなかったのに対し、ある種のイオン液体電解液中では活物質層全体にわたってLiが分布しており、充放電反応が均一に進行していることを明らかにした。この成果を日本化学会CSJ化学フェスタ2017において発表したところ、優秀ポスター発表賞 (材料化学分野) を受賞したことに加えて、受賞者を筆頭著者とする論文がChemElectroChem誌 (IF:4.12) に掲載された。また、今秋の国際学会においても発表を予定している。

このように受賞者は、短期RA事業の精神を理解しかつ実践しており、またこれを糧とし今後の一層の成長が期待されるため、本賞を授賞するにふさわしいとみなされる。